Happy Snappy Deadman's West. ページ2
【Happy Snappy Deadman's West.】
著者：虎助
長い間放棄され、錆びて止まった車の列。棚が倒れ、商品の散乱したスーパーマーケット。公園のベンチに佇む、帰らない持ち主を待つテディベア。
高い壁で囲まれたかつてのシェルター・ウェストは、２年前に起きたゾンビ襲撃事件により、ゴーストタウンと化していた。
先の事件以来、シェルター・ウェストは軍の管理下に置かれ、元々この街に住んでいた人々であっても、立ち入りは一切認められていない。
そりゃそうだ。壁の内側には、まだゾンビがうろついているのだ。武装をしていない人間なんて、ゾンビにとっちゃ餌でしかない。
だが、武装をしている人間にとっては？
店内に転がる有用な商品、民家に残された貴重品。
それらは十分、宝になり得るだろう。そして、その宝に対価を払う人間もいる。だから、俺たちの商売は成り立つのだ。
「くそっ、しつこい奴らだぜ」
舌打ちをして、ギルバートは半分崩れた壁に背を預ける。
毛先が外に跳ねた金の短髪に、すみれ色のつり目。ご婦人方から評判の甘いマスクも、今は眉間に寄った皺のせいでずいぶんと険しい。
「いや、アナタのせいでこうなってんだからね」
言いながらじとりと睨んでやれば、ギルバートが悪びれる様子もなくニヤリと笑った。
そう。何を隠そう、俺たちをこんな所に隠れなければならない状況に追いやったのは、この男だ。
よせば良いのにパトロールに来た軍人を襲撃し、バギーごと装備を奪い取ったのだ。いかんせんその後の処理がお粗末だったせいで、俺たちは今、絶賛鬼ごっこ中というわけである。
「先生、どうする？ ロケットランチャーでも撃ち込む？」
うなじを隠す長さの黒髪に、丸っこい鳶色の瞳。
まだあどけなさの残る顔立ちをした少年……マコトが困り顔で恐ろしいことを提案する。
見れば、その手には先ほどギルバートが奪い取ったRPGがしっかりと握られていた。ご丁寧に次弾まで用意してある。
「やめて差し上げろ。いくら田舎の末端隊員だって言っても、軍人は軍人。敵に回して良いことなんか無いぞ」
そう、良いことなんか１つも無い。
それに、身ぐるみ剥がされた上にボッコボコにされて返り討ちじゃ、彼らも立つ瀬が無いだろう。
……いや、装備奪われてる時点でもう十分無いか。
「ならスタングレネードでも投げ込むか？」
「それはちょっと勿体無い」
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