Ep.10 ひとりごと ページ10
────……なぜ、この人がここに?
彼女はいつも笑顔を湛えている。
それは普段のニコニコとした快い笑みであったり、ちょっとした意地の悪さを浮かべた挑戦的な笑みであったりしたが、とにかくどこか子供っぽさを秘めた何かしらの感情が彼女にはあった。
それが今はすっかり消えていた。
笑みは妙に薄く皮肉っぽい、口角をゆがめただけにも見えるような不自然な表情に変わっている。
「へえ……あなたが"安室さん"なんだ? 調べときゃよかったな」
「え?」
ポツリとしたひとりごとのような呟きに思わず安室が聞き返す。その声音の冷たさに違和感を覚えたのは、普段の彼女を知る蘭やコナン、梓だけだった。
「Aさん……? あの、どうかしました?」
「ううん、なんでもないよ!」
おずおずと蘭が声をかけると、次の瞬間Aは元の快い笑顔で振り返った。それからまた安室へ顔を向け、今度は一点の曇りもなく右手を差し出す。
「JKに大人気の看板店員だってえのちゃんたちから聞いてるよ! 私はAA。よろしくね、イケメンさん!」
「ええ……安室です。こちらこそよろしく」
「Aさんは安室さんが入る前からよくポアロに来てくれてたんですよ! ここ一年くらいは期間が空いてたんですけど、最近また……」
「それよりえのちゃん、今日はなんだかにぎやかだけど何かあったの?」
まだ不自然さは拭いきれなかったものの、Aはすっかり普段の調子に戻り、話は目の前の問題へと移った。
喫茶ポアロは近頃とある問題を抱えていた。
それは、新しく設置したケーキストッカーの中に保管したケーキが翌日の朝には崩れている、という謎の事件である。
ケーキと聞いた瞬間にAの目が輝いた。
「へえ……事件発生は不定期で頻度は三日に二日くらい、か。その捜査に江戸川くんたちが動いてたんだね」
「オレたちは少年探偵団だからな!」
「謎があれば解き明かさずにはいられませんから!」
「それに、安室お兄さんのケーキまた食べたかったもん!」
「あっ、わかる! ここのケーキおいしいよね!」
三人の子供たちの名は、元太、光彦、歩美。
コナンと同じ学校に通う小学一年生であり、Aは当然彼らよりもずっと歳を重ねた大人……なのだが、甘いものの話となるとこの調子なので初対面の子供たちからしても取っ付きにくい相手ではなかった。
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上坂 - 夢主好き💛 (2023年1月19日 21時) (レス) @page14 id: f311cd81c1 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主好き💜 (2023年1月4日 18時) (レス) @page32 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(エモジシクジッタタメサイソウイタシマス) (2022年12月13日 3時) (レス) id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - おめでとうございます!!!!!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ (2022年12月13日 3時) (レス) @page25 id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - はじめまして!ほろにがクラゲ★様いつもの楽しみに読ませていただいております。本当にコナンの世界に出てきそうな感じの夢主さんでこれからの展開にワクワクしております。卒業試験頑張って下さい!! (2022年12月1日 15時) (レス) @page13 id: 33a5069289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年11月25日 16時