情報の対価はスイーツで！【名探偵コナン】

Ep.31 盗み聞き ページ31

「僕がどうかしましたか？」

突然聞こえたその声は、今この瞬間にもっとも聞きたくない声だった。

一瞬で脳から足先まで緊張が走り、咄嗟に振り返る。

いつから話を聞いていたのか……そこにはまさにあの男、安室透がニコニコと裏のありそうな笑みで歩み寄ってきていた。

「……どうも。いつの間にそこで盗み聞きしてたの？」

「すみません、そういうつもりはなかったんですが……」

「いやいや、別にいいよ。人の話を盗み聞くことに関しちゃ私が言えたもんじゃないしねえ。安室さん……いや、バーボンって呼んだ方がいいのかな？」

私がそう言えば相手も歩みを止めて表情を変えた。

やはり間違いない。若い女の子に大人気だという彼の本当の顔は、その素性を隠しポアロへ潜入している、組織の探り屋「バーボン」だったというわけだ。

「……なるほど」

感情の読めないその呟きに私も警戒を強める。

が、妙だった。

ふいに安室が張り付けたような愛想笑いをやめたかと思うと、なぜかコナンがため息を吐いて額を押さえた。

「やっぱり……」

「まあ、無理もないか……」

そして難しそうにそう呟くのだ。

二人のその反応は私にとってまったくの予想外だった。奴らへの仕返しを完遂するために、あらゆる情報に触れあらゆる可能性を考えていたハズなのに、今目の前で起きていることがいったいどんな真実を明らかにしようとしているのかがまるで分からない。

「……何が？」

呆然と二人の顔を交互に見やる。しかし彼らはすっかり緊張感のない様子で困ったようにするだけだった。

「やっぱりAさんは組織を追ってたみたいだよ。どうする、安室さん？」

「そうか……なら予定通りだ。こればかりは仕方がないよ」

「え？ えっ、マジでなに、どういう……何、江戸川くんもグル！？」

「違うよ……」

半笑いでそう返され困惑が深まる。

おかしい。江戸川コナン……工藤新一は、例の組織に毒薬を飲まされた被害者で、安室透はその組織に属する探り屋。それを知っている江戸川くんが彼を警戒しないはずはないのに、少なくとも今、そんな様子は見られない。

だとしたら彼らにどんな繋がりがあるって言うんだ？ 利害関係？ 個人的な関わり？ いや、どれもしっくり来ない。

江戸川コナンが“あちら側”ではないのなら……。

「……いや、待って。それってつまり……」

予感があった。はっと顔を上げると、喫茶店では見たことのない表情の安室透と目が合った。

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