Ep.11 イケメン店員さん ページ11
「……で、結局ケーキが溶けた原因は、ケーキストッカーの横に置いてある電気ポットの蒸気だってことが分かったんだ」
「ふーん……」
数日に及ぶ捜査により解明された真相をコナンが話すと、Aは思いのほか薄い反応を見せた。
「あれって……去年の春に出た『Ti-ta』のIoTポットだね」
「み、見ただけで分かるんですか!?」
「すごーい!」
「まあ、カタログで見たことあってさ。それよりイケメン店員さん……安室さんはいつからこの真相に気付いてたのかな?」
Aはどこか鋭さのある目を安室へ向ける。
「僕が? なぜです?」
「なんとなく頭が切れそうだしさ。何より店員であるあなたは絶対に江戸川くんよりも早く事態を把握していたはずだし、現場にいる時間も長かったでしょ?」
「そっか! 安室の兄ちゃん、探偵だもんな!」
「探偵? へえ、あなたも探偵なんだ? 忙しいねえ、喫茶店の人気店員と探偵と……他にも何かやってるのかな?」
詰め寄るようにたたみかける言葉と表情は、またあの皮肉げな冷たさを含んでいた。安室は答える。
「ええ、毛利さんの弟子をさせていただいてます。まだまだ勉強しなきゃいけないことばかりですよ」
「ふうん……毛利小五郎の……。じゃあその勉強の成果を聞かせてほしいね。今回の事件、どうやら江戸川くんが解いちゃったみたいだけど、安室さんは何かお店のために手を打ったの?」
「捜査の方は探偵団のみんなにお任せしていましたから、僕は別の方向から解決策を考えてみたんです。何せ僕の仕事は喫茶店員ですから……」
そう言うと、安室は先程から何やら準備していたものをカウンターへ置いた。
「なんだそれ? 食いモンか!?」
「ケーキみたいだけど、前のやつと全然違うね……?」
「そう。今度はケーキが崩れないように、最初から崩れている“半熟ケーキ”を作ってみたんだ」
「半熟ケーキ?」
「中のスポンジにはちゃんと火が通っているんだよ。ほら」
「わあーっ! おいしそー!」
「じゃあまた安室の兄ちゃんのケーキ、ここで食えるんだな!?」
「よかったですね、お姉さん!」
しぼんだ形のケーキを半分に切ると、中から流れ出すクリーム。子供たちも蘭も梓もわあっと声を零す。
ここのケーキを好きだと言っていたAも喜ぶだろう、そう思って振り返った先で、やはり妙に静かな様子のAは困ったように薄く微笑んだ。
「……うん。そうだね」
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上坂 - 夢主好き💛 (2023年1月19日 21時) (レス) @page14 id: f311cd81c1 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主好き💜 (2023年1月4日 18時) (レス) @page32 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(エモジシクジッタタメサイソウイタシマス) (2022年12月13日 3時) (レス) id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - おめでとうございます!!!!!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ (2022年12月13日 3時) (レス) @page25 id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - はじめまして!ほろにがクラゲ★様いつもの楽しみに読ませていただいております。本当にコナンの世界に出てきそうな感じの夢主さんでこれからの展開にワクワクしております。卒業試験頑張って下さい!! (2022年12月1日 15時) (レス) @page13 id: 33a5069289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年11月25日 16時