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Ep.171 またね ページ21

途中で挟んだ休憩を除けば東京までは一時間とかからなかった。結局米花町まで送ってもらって、駅の裏手で私はバイクを降りた。私がヘルメットを脱ぐと、世良さんもサイドスタンドを立てて自分のヘルメットを小脇に抱える。

「本当にここまでありがとう」

「いいよ、どうせ帰るついでだったしね」

「……聞かなかったね」

「え?」

「私が何者なのか……私と繋がりのある組織のこと」

そう口にすると、互いの間にある空気が張り詰めるのを肌で感じる。彼女が覚えていないはずがなかった。

「……ごめん」

そう言ったのは私だ。

「繋がりがあるとは言ったけど、実は何も知らないんだ。もうその繋がりも切れてるし……そいつらから逃げるために私は今あの船で死んだことになってる」

「なんだって……? じゃあキミが急いでいたのは……あの船の爆発もその組織の仕業なのか!?」

「たぶんそうだと思うけど、大元の奴らについては本当に実態があるのかすらも分からなかった。私はただあのホテルの件の調査を手伝わされただけで……どうしてあなたみたいな高校生が危ない連中を追ってるのかは知らないけど、協力はできないと思う」

眉を下げてつらつらと並べ立てる嘘は、道中で組み立てた言い訳だった。

もし私がここでメアリーやAPTX4869のことを知ってると言ってしまったら、たぶんMI6からも身柄を狙われる羽目になるので彼女に真実を話すことはできない。

「……そう、か……。……これからどうするんだ?」

「信頼できる人と約束……っていうか言質とってるから、家に帰れるようになるまで守ってもらうつもり」

「やっぱ(したた)かだな、キミ」

「そうかも」

ふふ、と笑ってみせる。世良さんも少し眉を下げて微笑む。

やや煩雑な一車線道路の片隅。ブルーの養生シートで覆われた建築中の建物、駐輪禁止の立て看板、華やかではない日常風景の中で、緑色の瞳と見つめ合う。

世良さんはおもむろに右手のグローブを脱ぎ、その手を差し出した。私はその手をぼんやり見下ろして、また彼女の瞳を見つめる。

今までで一番柔らかい眼差しだと感じたのは、きっと気のせいではないだろう。

右手を伸ばして握り返すと、やっぱり彼女の手は温かかった。

「……またな、Aくん」

「うん。またね、世良さん」

例えこれが最後になるとしても。

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サラキ(プロフ) - 完結おめでとうございます。長期間の連載、本当にお疲れ様でした。とても素敵な作品を読ませて頂いてありがとうございます。これからも応援しています。 (2022年10月17日 16時) (レス) @page24 id: 8b491ab3be (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールでこの作品を投稿してくださり本当にありがとうございます。知ったのは遅かったですが、完結前に応援を出来たこととても嬉しく思います。 ほろにがクラゲ様 の今後の活動を心より応援しております。本当に長い間お疲れ様でした。 (2022年10月11日 17時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - わざわざ返信ありがとうございます!ログインしていない時にコメントしたのでIDは違いますが、本人です。私も文を見返してアホだなぁと笑ってしまいました🤭 (2022年10月6日 21時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです(~*ˊ꒳ˋ*)~ ちょっとでもリアリティを感じてもらえたらと書いております☺️すみません、突然の誤字にちょっと笑ってしまいましたw (2022年10月3日 10時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
m - 文、変に語彙ってしまいました。すみません🙇‍♀️ (2022年9月28日 4時) (レス) @page3 id: 721fbfd58e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年9月27日 16時

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