メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.107 ファンシーカラーダイヤ ページ7

「それでおじさま、これが例のカラーダイヤ？」

「ああそうじゃ！ 夜には近くでは見られなくなってしまうからのォ。これが今回、奴をおびき寄せる為に用意したビッグジュエル……」

宝石は四角柱の台座の上に、ショーケースを被せられて鎮座していた。

鮮やかな青。ファンシーカラーダイヤと分類される、カラーダイヤの中でも希少性の高い天然の石だそうだ。この船の名前にも「ファンシー」と入っていたが、ここをお披露目の場に選んだのはそういう理由だろうか。

「ねえねえ、怪盗キッドからの予告状ってどんなの？」

と、出し抜けにコナンがそう言い出した。

初め、中森警部は難色を示していたが、コナンのキッドキラーとしての実績を次郎吉に説かれると渋々届いた予告状を懐から取り出した。

コナンがそれを受け取り、探偵団の後ろから蘭、園子が覗き込み、さらに後ろから私が覗く。文面は……全く意味が分からなかった。キザっぽくて回りくどくて妙に詩的ないつもの予告状。

犯行の日付と時間は確かに記されているのかもしれないが、正攻法で読み解くのは早々に諦め、少し考え方を変えてみることにした。

……思うに、今夜というのは考えづらい。

この船旅は全体で五日間。初日は特に気合を入れて警備に入るだろうし、下手に騒ぎが広まればクルーズ自体、翌日以降の日程調整など不本意な対応を強いられるかもしれない。マジシャンというエンターテイナーの側面を持つ彼がそこを蔑ろにするだろうか。

二日目以降はどうだ？ 警備は徐々に習慣化し、初日に比べれば隙は多くなる。だがその頃には太平洋のド真ん中だ、宝石を返したとしても陸まで逃げるのは難しい。船に留まる時間が長引くほどにリスクも増す。二日目、三日目をあえて選ぶ理由はない。

ならば四日目か五日目。月下の奇術師と言うからには、この豪華客船という絶好の舞台でわざわざ白昼に現れるのは演出的にいかがなものか。五日目は夕方に着港するから、夜を待つなら……。

「奴は今夜現れるに違いない！ 宝石のお披露目パーティーは五日間の日程の中で最も宝石の周辺に人が集まるタイミングだ！ きっとまた一般客に紛れて……」

「じゃが中森警部、出港すれば彼奴にとっても逃げ場はないぞ。最終日まで船内に潜伏するより、着港直前を狙う方が現実的では……」

「難しいね……」

「うーん……」

各々、予告状を見て首を傾げては唸っていた。気持ちは分かる。なんならまともに解こうとするだけ私より立派だ。

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