メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.105 五日間よろしくね ページ5

出航当日。

週末の横浜は晴れ渡り、青い空と海に真っ白な船体が浮かぶ大桟橋には屋外から人だかりがあった。

「あっ、Aちゃん！ こっちこっちー！」

振り返ってみると、ごった返したターミナルのロビーで子供連れの一団を見付けた。蘭と園子に少年探偵団五人組がくっついてる感じ。

「ごめん、遅れて。ロビー混み出しちゃったね」

「いいのよどうせ関係者用入口だから！ っていうか……顔色悪くない？」

「そう……？」

「うん、ちょっと隈もできてるよ」

「ただの寝不足。でも、眠くないから」

「それ眠気通り越してんじゃない……？ 荷物置いたらすぐ休んじゃえば？」

「いや、大丈……」

「よっ！ 探偵のねーちゃん！」

「おはよー！」

「おはようございます！」

朝十時から元気な子供たち。彼らはそのまま口々に喋りだしそうな様子だったが、今は私から簡単な挨拶を返すに留め、早速私たちは船内へ向かうべく歩き出した。

学校指定カバンより一回り大きい程度のボストンバッグを肩にかけ、一番後ろについて歩くコナンと灰原さんに続いた。と、二人が同時にこちらへ視線をやる。

あー……そういえば灰原さんとは、私が二人を撒いて逃げ出したあの時以来だな。そりゃ露骨に警戒するのも無理はない。

ただし特に怯えられているようには感じない。ならば、灰原さんには話してないんだろう、私のこと。とはいえ「江戸川コナンの秘密について」という質問を放り投げたままの私が不審人物であることには変わりないというわけだ。

「……な、なに？」

じっと見すぎたのか、コナンがそう尋ねてくる。心なしか灰原さんを庇うような立ち位置だ。

船内で常にコソコソするのもうっかり鉢合わせて言い訳に困るのも嫌だったから一緒に来たけど、どうか彼が私にこれ以上興味を持ちませんように。ホント、関わらないでほしい。

……無理な気はするんだけど。

だって、ねえ。彼だし。

かといって今更仲良くなるというのも現実的な話ではないだろう。あれだけ不審行動をとっておいて、納得のいく理由が提示できず、私が組織の関係者であることもコナンにはバレている。この状況をどうひっくり返せというのか。

私は危険人物じゃないから心配しないで────とも言えたものではない。

仮に、彼を殺せと指令があったとき、私はそれを裏切れるかどうか自分でも分からないのだから。

「五日間よろしくね。二人とも」

「……ええ」

「……」

うん、やっぱり露骨な警戒。

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