メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.120 そうまでして ページ20

初めは、向けられた殺意に対する怒りだった。

「(……どうして)」

なぜ私が殺されかけなければならないのか。組織に消されるのならまだ分かる。だがアレは確実にあいつの独断だ。

怒りを冷ましたのは疑問だった。

なぜ。そうだ、なぜ？ どうして私は殺されかけた？

私が計画の邪魔をすると思ったのか？ でも私が本当にそのつもりならあの薬を突き返したりはしないだろう。帰るなら勝手に帰れとも言ったし。

なら、奴は本当の目的をまだ隠している。それは私を殺すことで果たされるのか、それとも突発的に発生した通過点に過ぎないのか。

疑問が疑問を呼ぶ。

そもそも自分のことながらなぜ私はあの計画に乗らなかったのか。

願ったり叶ったりじゃないか、組織に加担していた顔も知らない誰か一人を利用すれば私たちは元の世界に帰れる。その程度の自分勝手は初めから自覚していたはずだ。

それでも私は気に食わなかった。

突然差し伸べられた救いの手が信用出来ないからだけではない。

あんなやり方では納得できなかった。

だって私は……。

……。

……分かってしまったんだ。

私は、諦めたフリをして、居心地の悪いこの世界から逃げようとしていただけなんだって。

私は彼らのようにはいられない。彼らと肩を並べるにはあまりに煤けた人間だ。彼らのようにありたいと願う反面、その難しさを思わずにはいられなかった。

いざとなれば何を犠牲にしてしまうのか分からない自分自身が嫌い。

だから諦めた。彼らと同じ「探偵」であることを。

そして逃げた。致命的な間違いが許されてしまう場所へ。

────今更、怖くなった。

そうやって見ないフリをしたまま間違え続けた先の結末が。

目的のために他人を利用して、自らの本懐のみを優先した末に残るものはなんだろう。

それはきっと身勝手の残骸。取り返しのつかない不幸。

奴の計画を聞いてそれが分かった。


────私は本当に、そうまでして────……？

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