Ep.38 可能性としては ページ38
思わず、ほとんど反射で振り向く。
私が今いるのは、開け放たれた検眼室の扉の脇。鑑識員は扉を入ってすぐのデスクに置いてあるノートPCを持ち上げていた。その下から出てきたのはメモ用紙程度の大きさに千切られた紙切れ。
裏返しても白紙。そばには紙の資料なども置いてあるし、ペン立てが倒れて中身が散乱している。何かの拍子にPCの下に滑り込んだゴミにしか見えないが……。
「……」
……あのノート、随分古い型だ。ずっと電源が入っているが、冷却ファンの音も妙にうるさい。内部に埃が溜まっているのだろう。
…………。
母に聞いたことを思い出した。
「(……可能性としては有り得る、か)」
根拠のない仮説が立ったところで、鑑識員に歩み寄る。
「ん? なんだい、お嬢ちゃん……」
「その紙、調べますか?」
「紙って……この紙切れかい? まあ、そうだな。指紋くらいは……」
「……それなら────」
────────
騒然としたデパート内の一角、メガネ専門店で一人の女性が叫ぶように言う。
「わ、私が犯人だって言うんですか!?」
動揺を隠せずにいるメガネ店の女性店員、小野目。彼女を同僚殺しの犯人だと推理したのは、偶然その店に立ち寄った大学院生、沖矢昴だった。
「ええ……今お話したとおり、あなたの証言には決定的な矛盾があります。あなたが検眼室に繋がっているバックヤードへ姿を消した時間帯も、遺体の死亡推定時刻と合致する……」
「そ、そんなの、ただの記憶違いじゃないですか!」
「落ち着いてください、小野目さん……」
「確かに今の説明も筋は通っているが、それでは決定的な証拠とは……。遺体が握っていたのは赤いボールペンだけで、まさか犯人の名前が書いた紙が残っていたわけでもあるまいし……」
「残っていたんですよ。検眼室の、机の上にね」
佐藤が容疑者である小野目を落ち着かせる間に、目暮は沖矢が展開した推理に証拠がないことを指摘する。しかし沖矢はその言葉を待っていたかのように切り出した。細い目を、ある一方に向けて。
「そうですよね、女子高生探偵さん?」
その視線の先で、ややふてぶてしく立ち尽くしたAが涼しい目をしている。
「"女子高生探偵"?」
「失礼、まだお名前を伺っていなかったもので」
「……っていうか、何のために鑑識さん伝いでアレを渡したと……」
「その鑑識さんに聞いたところ、あなたがそう指示をしたと言うものですから」
Ep.39 千切られた紙片→←Ep.37 ただの高校生ですから
1421人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時