Ep.29 チェックイン ページ29
街をさまよってしばらく、私はいよいよ現実的な問題に直面する。
制服姿で夜の街をうろつくわけにはいかない。
となればどこかに泊まるしかないが、思い付く候補は限られる。何せ私は高校生だ。
金銭的には……たまたま、バイトの報酬で受け取った現金をカバンに入れっぱなしにしていたので、そこまで切羽詰まってはいないのだけれど。
ただ、法的な縛りが厳しい。ネカフェの夜間利用は条例で禁止されていることもあるし、意外と身分証明が必要だったりするのだ。
────というわけで、今夜は近場のホテルに泊まることにした。
こういう時こそ余裕を持つのが大事だ。しっかり温まって寝て休んで、健康的に体力を温存しなくては。
観光業は閑散期、しかも平日。素泊まりなら頑張れば驚くほど安くなる。下手なカプセルホテルより安価だ。
契約会社の関係かインターネットに繋がらないスマホを、適当なフリーWiFiに接続して、旅行系サイトにアクセス。コンビニで親権者同意書をプリントアウトし、身分証明書との辻褄合わせのため母の情報を勝手に記入。年齢ちょっとサバ読んどくから許してほしい。
日が暮れかけた頃、駅からほど近いシティホテルに到着。フロントで料金の前払いを済ませるとともに捏造した親権者同意書を提出。カードキーを受け取って部屋を目指す。
そういえば、ホテルに泊まるのもいつぶりだろうか、と考えるが、バイト関係でこないだ泊まったなと思い出した。
そうそう、あの時は確か、お母さんが……。
考え事をしながら歩いていると、前から人が歩いてきた。私の部屋このあたりみたいだし、なんか入る瞬間にすれ違ったりしたら気まずいなあと思いながら一瞬目をやり、すぐ前に目を戻す。
あれ、なんか、知ってる人のような…………。
……二度見せざるを得なかった。
顔に出さないよう、態度に出ないよう、その人とすれ違うまでの直線を、心臓の鼓動に気を取られながら歩く。
「(そんなことある？ ……あるのか？ 有り得なくはないけど、あるのか、そんなの)」
廊下の真ん中で私たちはすれ違った。相手の目が少しこちらを向いていたような気がした。ほんの数秒の間に散々迷い、意味のないことだと分かりつつも、すれ違うその瞬間、私も横目に見返した。
僅かな間、視線が交錯する。
そして互いに何事もなく通り過ぎる。
廊下に二人分の足音が響く中、遠ざかる気配を背に感じながら、部屋の扉にカードキーを翳した。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から！ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…！✨ またよろしくお願いします！ (2021年11月2日 15時) (
レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます！ 応援してます！ (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます！ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます！お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2021年9月7日 21時
