Ep.5 怪盗ヴィオラ ページ17
午後9時を回った。
怪盗キッドの予告時間まで、残るところ1時間。当初宝石が保管されていた鈴木邸は侵入も容易、全ては順調に事が進むはずだった。のだが……
「くっそー……なんでこう上手くいかねえんだ……」
現場から少し離れた建物の影、黒羽快斗は黒いキャップの上からがしがしと頭をかいた。
警備員の制服も、純白の衣装も脱ぎ捨て、今やカラスのような風体の青年。世を騒がせる怪盗キッドの仮面を剥いだ本来の姿だ。
快斗は地面に置いたノートパソコンに視線を合わせたまま片耳のイヤホンにそっと手を這わせた。
「
やがて、ため息混じりに「そうか」と呟いて黙りこくった。
おかしい。こんなに警備の手が早かったことは今までにない。あの名探偵がいるにしても早すぎる。
移動した宝石の居場所、せめてそれさえ分かれば。あの騒ぎがあった後だ。詳細を知らされている少数の関係者に紛れるのは難しい。
ただ……もし潜入するのなら化ける相手は決まっていた。選ばれた関係者の中で唯一の女性、かつ国外にいたので周囲との親密性が比較的低くボロが出にくい。
それを躊躇っているのは、下手げな警備員や警察官よりも厄介な相手であると身をもって実感したからだ。
まだ時間はある。きっと他に手はあるはずだ。
「何か……、……」
「
「え？ あ、ああ、はい？ じゃなくて……
声をかけられた。慌てて相手に合わせた言語で返す。
いつの間に近づいたのだろう、その女性は快斗の目の前にいた。果たして民間人だろうか。何にせよ、背後から迫られるよりはよほど都合が良かった。
しかし安堵したのもつかの間、女性は快斗を見下ろして唇に弧を描いた。
「なん……」
「お困りだね、怪盗キッド！」
「！？」
「なんだいその顔。忘れたとでも言うの？ 自然史博物館での鬼ごっこ、ワタシはまだあの熱が冷めやらないってのにさ」
「その口調……な、なんであんたがここに？」
「要件ならこの間言ったよ。ワタシと手を組もう、キッド」
快活にそう言って手を差し出す女性は、首筋から胸元にかけてがレースになったイリュージョンネックのワンピースをまとっていた。相変わらず顔がよく見えないのは、逆光を背負っているせいだった。
「……怪盗ヴィオラ、か」
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» こちらこそ続編までありがとうございます！読んでくれる皆様のおかげです……！一生じゃなくていいのでまた着いてきてくださると嬉しいです(笑) (2019年9月28日 14時) (
レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 本当に過去編を書いてくれるなんて、、、！ありがとうございます！！一生ついて行きます！笑 これからも更新頑張って下さい！ (2019年9月25日 20時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2019年9月25日 18時
