鈴木財閥の裏表レディは怪盗の相棒【天空の難破船/名探偵コナン】

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『キッド！』

『さすがはキッド様ね！』

イヤホンからは安堵に沸き立つダイニングの様子が聞こえた。……と同時に、犯人グループ『赤いシャム猫』の会話も耳に入る。「やはり怪盗キッドが紛れ込んでいたか」……、忌々しげにそう言ったのは、おそらくあの口ひげの男だ。

「……なるほどねぇ。どうしてわざわざ船外に放り出したかと思えば……」

コナンを無力化するだけでなく、怪盗キッドを炙り出し船から追い払うための行動だった。

確かに脅威だ。神出鬼没の怪盗は変装も逃走も自由自在、この船のどこにいるか、誰がそうなのかさえ分からない。

……けど、そうまでして徹底したい計画って？ 奴らの目的は、鈴木財閥の飛行船を使って細菌をばらまくこと……。

(……本当に、そう？)

何か、他にやりたいことがあるように見えてならない。爆弾はついでの仕掛けで、そうなると「鈴木財閥への怨恨」っていうのも建前なんじゃ……。

……分からない。だって奴らは現に、実験室から殺人バクテリアを盗み出している。そんな大事まで起こして本命が別にあるとは、あまり考えにくい。

『……おい！ さっきの女は！？』

『クソ、どこに行きやがった！』

犯人たちがイヤホンの向こうで騒ぎ出した。どうやら私があの場にいないことに気付かれたらしい。

だがしかし、ここは鈴木財閥の飛行船ベル・ツリー1世号の機内。そして今回「天空の貴婦人」を盗み出すため念入りに内部構造を把握している。

私は鈴木財閥の次女、鈴木A。そして今回は怪盗の一味。悪いけど、外部の連中じゃ鬼ごっこにもなりはしないさ。

エレベーターや階段からも四角になり、なおかつこの立ち入り禁止区域への入口がこちらからは見渡せる場所。普通なら登ろうとも考えない天井付近の鉄骨に寝そべり、傍目に見ればクラシック音楽でも聞いてるかのような調子で片耳から盗聴電波を拾う。

やがて銃を構え周囲を探索する武装兵が、立ち入り禁止区域をくまなく探し始めた。階段をかけ登り、ハシゴを降り、柵の裏側まで探しているが、まだこの辺りまで来る気配はなさそうだった

その中に、違う動きをする兵が二、三人。

ウエストポーチの単眼鏡を取り出し、行動を監視する。兵たちは爆弾を仕掛け直していた。

(何度仕掛け直しても同じ……と言いたいところだけど、これだけ探し回られてちゃ下手に動けないか……)

かといって推理も私の仕事じゃない。彼が「名探偵」と呼ぶあの子なら、この事件を解いてくれるだろうか。

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