Ep.3 赤いシャム猫 ページ12
船内見取り図を光彦が見て、先頭を元太が行き、歩美は後ろを見張るのが基本スタイルだった。怪しまれずに船内を巡っておくためそこに加わったAは、三人の連携に素直に感心してしまう。小学一年生だというのに、なんというチームワーク。
(コナンくんほどではないにしろ、敵に回したら油断ならなそうだ……)
時折見取り図を覗いて道のサポートをしたり、クルーや警備の人に見つからないよう見張りに手を貸す。
「あれです、あのドアを開ければ……」
「……わぁー! 見て見て、すっごーい!」
「すっげー!」
目の前には、ついさっきエレベーターのガラス越しに見た飛行船内部が視界いっぱいに拡がった。青白い照明が足元を照らして、薄暗く神秘的な空間を演出している。
「あ、走らないようにね。お客さんが入ることを想定してないから安全対策はされてないよ」
「た、確かに……もし落ちたら……」
「そうそう、だから気を付けてゆっくり行こう!」
「はーい!」
三人から極力目を離さないようにしつつ、経路を計算するためあたりに目を配る。螺旋階段、通路、鉄骨……かくれんぼには向かないが、ここから逃げるとすればアクロバットな鬼ごっこができそうだ。
「あー! ほらあれ、さっきの!」
「クジラの肺!」
「近くで見ると大きいですねぇ……この飛行船の全長は、確か……ええと……」
「全長246m、最大直径42.2m……ヒンデンブルク号より1mずつ長いって浅野さんが言ってたね」
「ヒンデンブルク号って?」
「D-LZ129、1936年に初運航した当時の歴史上最大の旅客輸送用飛行船だよ。ベル・ツリー1世号と同じ硬式飛行船で、お空を飛んでる飛行機の三倍以上も長いの。『空の女王』なんて呼ばれるほど別格の航空機だったんだけど……」
「今はそれ、どこにあるんですか?」
「アメリカのニュージャージー州、海軍航空基地で爆発したわ」
「えっ!?」
「原因は水素が有力だって話だけれど、それまで使わなかった塗料とか静電気とかで外皮が炎上したとも……」
「そ、それってこの飛行船は大丈夫なのかよ!?」
「もちろん! 事故が起きたのは1937年。今から何十年も前だもの、今更飛行船から煙が上がるなんて誰も考えないわよ!」
「へえー……」
「Aお姉さん、すっごーい! コナンくんや哀ちゃんみたい!」
「え? そ、そりゃどうも……」
小学一年生と比べられても……というか、あの二人はいったい何者なのだ。褒められた割に素直に喜べず、曖昧に苦笑した。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時