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Purple Head Hunt / shppi ページ36

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「大丈夫。大丈夫ですよ。身の回りの事は俺が全部するんで心配しないでください。」
「わか、った。」

抵抗する気は元より無かった。彼は私を小さな監獄に閉じ込めたまま私をずるずると甘やかす。寝癖のついた髪に優しく指を通され、解れを直してゆく。頭をあやす様に撫でられて安心しないわけがなかった。前髪を片手で払い除けられて額に優しく口付けを落とされる。

「Aさん、いい子ですね。よしよし。」
「ぁ、」

あまりの温かさに瞼が熱くなる。目尻からじわじわと熱が集まり、次第にそれは一箇所に集結した。ほろりと涙が頬を伝う。久方振りに注がれる愛情に感動してしまったらしい。後から後から伝う涙は止まることを知らない。

「嗚呼、泣かないでください。怖くないですからね。」
「し、ょっぴ、く。」

彼は困った様に笑い、私の頬に唇を寄せた。唐突の事に吃驚してしまい、ぎゅ、と強く瞳を閉じた。生暖かい何かが私の方に触れて細かい動作で畝り、涙特有の不快感を拭い去った。片頬からその感覚が離れたので瞼を上げると爛々とした紫色と視線が絡み合う。

「Aさんの涙、甘いっすね。」
「あ、ぁ、」

べろりと赤い舌を出して恍惚に舌舐めずりをする彼は美麗で、あまりに美麗過ぎて恐怖するに値した。彼は優しく私の両耳を塞いで此方を幸福そうに見つめている。そのまま優しげに微笑んでまるで泣き噦る幼い子供に母親が諭す様に彼が言葉を紡ぐ。その言葉は私の正気を奪い去るに十分だった。

「Aさんはただ此処にいてください。無理して一人で溜め込む癖があるから、俺、心配なんですよ。だったらもういっそ、何もせずに此処で一生を過ごしましょう。何にも代え難い大切なものなんです。ずっとずっと此処にいてください。もうそれだけでいいです。」
「え、あ。」

脳漿がたぶりと揺れた。彼の声が脳奥に心地良く反響する。脳髄から彼の言葉に緩慢ながらも侵食されてゆく。戸惑い、隙を見せた私はただ彼の言葉に狼狽するばかり。けれど選択肢は最初からただ一つ。もう私にこの檻から逃げる術は存在しないのだから。それなら一層、彼の言葉通りに身を預けて虚構の安寧に一生浸ってしまおうか。




「頭を狩るにはまず脚から」

朽ちたプログラム/ shorn→←Purple Head Hunt / shppi


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  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆


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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年9月19日 22時

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