【wrwrd!】桎梏ダイナミズム【短編集】

束ねられし/ rbr ページ22

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「端的に言おう。貴様は要らぬ。面倒ごとが増えるだけだ。抑も私が貴様を側に置いた訳はごまんと蹲(つくば)う蟲の処理が別手に必要だと感じたから。にも関わらず蟲に逃惑い、妾からも逃惑い、蟲は妾の血族を貪り食い、結句、私の命で前支に討伐命令を出さねばなるまい。これを足手纏いと言わずに何という？」
「お許し下さい、A様！」

ぴきり。彼女の目尻がぴくりと跳ねた。空気が一斉に発言した獣人に牙を剥く。千を生き万に語られた気迫は凄まじいもので十二支に数えられてもやはり後支である彼等には恐ろしいものだっただろう。彼女から言わせれば怠慢を図った結果であり、流石に神獣である彼女も許す訳にはいかなかったのだ。

「許して何になる？貴様が妾の憂いを晴らせるとでも？甚だ図々しい。妾の今の憂いは貴様。最期くらい役に立ってはどうだ。」
「あ、あ"あ"あ"ぁ"あ！」

彼女は3人目の部下の首を両手で締め上げた。最期の言葉さえ残すつもりは無いらしい。もしくは許可のない勝手な発言が遺言だとでも思っているのか。部下の頭から舌と目玉が弾けて零れて転がった。その悍ましさは形容できるものでは無い。彼女は大して興味が無いとでも言うように死体となった部下を無造作に打ち捨てた。びしゃり、と瑞々しい肉の弾ける音がする。彼女の視線は残りの部下に注がれた。諦観したかの様な部下の表情の中に一頭だけ一際無感情な小さな獣が幸せそうに恍惚の表情を浮かべていた。

「路傍、と言うたな。何か言い残す事はあるか。」
「では失礼して、貴女への感謝と告白を。私は幸せ者でした。貴女に仕えられて幸せでした。その透き通ったお声を聞けて大変幸せでありました。私はただ貴女に殺される為だけに生まれて貴女に生かされて今、その天寿を全うできることにまたと無い至福を感じております。本当にお慕いしておりました。有難うございました。」

彼女は惨殺趣味は持ち合わせていなかった。普遍という土塊の中から掘り起こしたただの透明な石ころを丹念に丹念に磨き上げて余分な汚れや曇りを削ぎ落としたかの様な豪胆さと絶対的価値。残酷な迄に合理主義な彼女はその狂気とも言える愛を向ける獣に愉快な笑みを浮かべた。

「お前の魂胆が気に入った。生かしてやろう。」

瞬間、彼以外の残りの部下から真紅の雨が降った。

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