弐 ページ10
｢立派な日本家屋、ですね｣
｢そうでしょうか?広さはそんなに無いですよ。
さ、どうぞ上がってください｣
｢お邪魔します｣
｢たでーまー｣
｢いつからここは貴方の家になったんですか｣
あの後、医者は直ぐに家に来ることを決めた。考える時間すら惜しいほどに、この少年を救って欲しかったのだろう。
｢……あれ、あの子は?｣
医者が縁側を指さした。
そこに居たのは幼い少女、座敷童子だ。
｢鈴、戻っていたのですね｣
｢!!｣
たったったっと小走りで駆け寄ってきたかと思えば、俺の腰あたりに抱きついてきた。
俺たちが帰ってくるまで、一人あそこで待っていたのだろうか…。
｢……お子さん?｣
｢え、あ、いえ!えっとこの子は…｣
突然の発言に、言葉が詰まってしまった。
確かに座敷童子の見た目年齢で言えば、見えなくも………いや、流石に大きすぎる。
気を取り直し、俺は座敷童子のことを紹介した。すると、妖怪は初めて見たと医者は驚いていた。
｢鈴、貴方が帰ってきたという事はAさんも…｣
座敷童子は首を横に振った。
狐はまだ帰ってきていない、寂しい……素直にそう思った。
｢分かりました。
神宮寺さん、適当にくつろいで下さい。まだ帰っていないようなので……あ、お茶をお出ししますね｣
｢お気遣い、ありがとうございます｣
座敷童子と男にその場を任せ、俺は台所に向かった。
そして湯を沸かし、お茶の用意をする。
すると、視線を感じた。‘足元’から。
｢………っ!?｣
そろりと視線を下にやると、そこにはあの少年がいた。
ついさっきまで医者から離れなかったのに、突然なぜ俺の元に…。
そう思っても、驚きで声が出ない。
瞬きせず、医者を見る時と同じように俺を見ている。
｢な、なにか…?｣
やっと絞り出した声は、少しガラついていた。
そして、少年は何も言わない。
言っていたとしても、きっと理解できない。
どうしよう。
そう思った時、ニイッと笑った。
お世辞にも、子どもらしい笑顔とは言えない。
少年は手を伸ばし、俺に触れようとしてくる。
一歩後ずさった、けれどそれ以上動けない。
あと少しで、少年の手が俺に触れる。
その時だった。
｢これこれ、こやつはわしのモンじゃ。
いくら幼子でも、手を出したら許さんぞ｣
少年の腕を掴み。優しく声をかける狐。
しかしその言い回しには、確かな圧があった。
｢A、さん……｣
｢ただいま、幻太郎｣
この狐は、いつも俺を救ってくれる。
また、惚れ直してしまった。
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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします！！！！！！ぜひ続きを書いてください！ (2023年4月16日 14時) (
レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます！体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：心春 | 作成日時：2020年1月12日 9時
