捌 ページ34
｢Aは居るか｣
そう呼ぶ低い声が響いた。
｢海坊主様、お帰りなさいませ｣
以前も居た一尾狐が、深々と頭を下げる。
海坊主はそれを確認すると、一尾狐に問うた。
｢一尾、Aはどうした。
何故出てこない｣
その問に対して一尾狐は黙る。表情が変わらないこの狐は、何を考えているのか海坊主には分からなかった。
｢答えろ、一尾狐｣
｢……なりません。海坊主様には、お答えできません｣
｢‘には’?……どういうことだ｣
｢ですから、お答えできません｣
頑なにそう言う一尾狐に、海坊主はどうしたものかと頭を抱えた。
すると、その様子を見ていた一尾狐が口を開いた。
｢私たちは、A様によって作られた妖。あのお方の命は絶対。逆らうことなんて有り得ません。
…ですが、他の妖怪は違います。
貴方様の問に、答えるかも………これ以上は話せません。失礼致します｣
そう言うと一尾狐は深く礼をし、社の奥へと姿を消した。
海坊主は一尾狐の言う通り、他の妖を探し始めた。
社の外、そして中を歩き回ること五分ほどで見つけた。
厨の前、そこで丸くなって眠っている‘送り犬’という妖怪だ。
見た目は普通の犬だが、暗い山道を歩く人間の後をついて行き、転んだところを襲うという恐ろしい妖怪。
｢送り犬、寝ているのか｣
側にしゃがみ、その頭を撫でる海坊主。
するとゆっくりと瞑っていた目が開いた。
｢……もっと、撫でて下さい。
そしたら……起きます｣
｢む、それでは眠ってしまわないか?｣
｢………ｸｩ〜ﾝ……｣
案の定眠ってしまった送り犬。
海坊主は溜息をつき、他の者を探そうと立ち上がったその時だった。
｢海坊主様?｣
女性特有の高い声、それに呼ばれ振り向くとそこにはのっぺらぼうがいた。
｢のっぺらか｣
｢はい、お帰りなさいませ｣
口は無いが、確かに聞こえる綺麗な声。
海坊主は送り犬を諦めて、この物に尋ねることにした。
｢のっぺら、聞きたいことがある｣
｢はい、何でしょう?｣
｢Aは何処にいる。先程の部屋を見に行ったが、居なかった…｣
｢…それは……｣
｢答えてくれ、頼む｣
そう言って海坊主はのっぺらぼうの肩を掴んだ。すると白く綺麗な肌が、熟れた林檎のように赤くなる。
｢う、ううう海坊主様ぁ!?ち、ちか、近いですぅ!!?!｣
｢答えてくれ、のっぺら｣
｢A様は!む、村に……行くと…!｣
｢村…｣
海坊主は、心当たりのある場所を思い浮かべた。
そしてのっぺらぼうに一言礼を言って、海坊主はその場を後にした。
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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします！！！！！！ぜひ続きを書いてください！ (2023年4月16日 14時) (
レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます！体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：心春 | 作成日時：2020年1月12日 9時
