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「36度3分。うん、治った」

平熱よりも少し低いそれに、俺は笑みが零れた。これで部屋の掃除や原稿、買い出しなど出来る。

「あ、そういえば…」

お粥がまだ残っていたことを思い出して、俺は台所に向かった。
一食分のお粥を茶碗によそって、昨日と同じく茶の間で食べる。

やはり、何度食べても美味しい。

「やっぱり、俺が作ったものじゃないよなぁ…」

けれど、この家には俺しか居ない。

「………風邪を引くと料理の才能が開花する…とか」

どこのファンタジーだ。いや、ファンタジーにもならなければ面白くもない。
俺はネタになるかも、と思った考えをすぐに捨てた。

そして、黙々と食べ進める。

「ご馳走様でした」

手を合わせ、茶碗を流しへと持っていく。
それと鍋を洗い、俺は書斎へと向かった。

そこでも、少しの違和感を覚えた。

「……原稿、終わってた」

忘れていた。
少しでも時間を空けたくて、頑張って仕上げたのだ。
でも、何故時間を空けたかったのだろうか。肝心の理由が分からない。

「……暇になったな」

こうなれば、やることは掃除か買い出し。
書斎に来るまでに家の中を見た感じでは、掃除は必要なかった。
買い出しも、冷蔵庫には必要以上に食材があったため必要ない。特に、油揚げの数は尋常じゃなかった。

「………」

本格的にやることが無くなってしまった。
俺は縁側に座り、空をぼうっと眺める。

風邪を引いてから変だ。何が変なのかは分からないが変だ。

「……寂しい…な」

何故そう思うのか。
寂しいなんて、お爺さんとお婆さんが亡くなった時以来思ったことが無かったはずだ。
その感情は、とっくに蓋をしたはずなのに…。

「なんで……こんな…」

涙が出そうになるほど、寂しいと感じるのか。

俺は子供のように膝を抱え、暫くそこから動くことはなかった。

漆→←伍



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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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