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「すまんのぉ、幻太郎。
最後に情けない姿を見せてしまって…」

狐は頭を撫でていたその手で、愛しい者の目を隠す。
そして、その手から光が溢れた。

「…まずは、目」

光が消えると、再び頭を撫でる。
そして狐は、静かに涙を流した。

「お前さんは優しいからのぉ、わしを手放しても…わしを愛してくれるんじゃろ?

でも、それでは本当に苦しいだけじゃ」

だから、その全てを消してしまおう。

狐はそう言って、触れるだけの口付けをした。

「愛している。幻太郎」

けれど、お前自身を愛する時間を欲しかった。
狐はそう言葉に出かかったが、それを飲み込んだ。
言葉にしてしまえば、無理矢理にでも傍にいてしまいそうだと思ったのだ。

「A様」

「A様ぁ…」

座敷童子達が、今にも泣きそうな顔で主の名を呼ぶ。いや、一人は既に泣いていた。

「お前たちに苦しい思いをさせてしまうこと……どうか許して欲しい」

「私達よりも苦しいのは貴方様です」

「そうだよぉ…ひっく…うぅ…」

「太次郎、いい加減に泣くのはやめなさい」

「鈴姉様は……苦しくないのっ…かよぉ?」

「………言葉にしません」

そう言った少女の手は、震えていた。
狐はそれを見逃さない。

「お鈴、太次郎。
粥を作ったら出るぞ、良いな」

座敷童子たちは頷き、狐と少年は台所に向かった。少女は一人、その場に残る。

「……二度、貴方に出会えたことに感謝します。
でも、その決断が正しいとは…鈴は思えません」

冷たく言い放ったその言葉は、誰にも届かない。
少女は布団をかけ直し、二人の後をおった。

伍→←参



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ふぃっく - 一番気になるところで終わるのがウズウズします!!!!!!ぜひ続きを書いてください! (2023年4月16日 14時) (レス) @page38 id: 634615dde5 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - ロールロールさん» コメントありがとうございます。最近更新出来ずに申し訳ありません…。近々更新致します。あたたかいお言葉ありがとうございます。 (2020年4月5日 12時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
ロールロール - はじめまして!とても楽しみに更新待ってます!体調管理に気をつけてください!応援してます。頑張ってください。 (2020年4月5日 0時) (レス) id: d8adda4a88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:心春 | 作成日時:2020年1月12日 9時

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