漆の巻 ページ8
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お囃子が鳴り響き、吉原の街は昼と違った表情を見せる。
「昼間より武士が多いな。」
稽古や勉学が少し落ち着いてきた時間、遊女に癒してもらいに来た武士が多い。
このものの癒しは女なのか。そう思うと、うちの家臣は少し違ってくるのか?
刀に名前をつけて毎晩一緒に寝ている方がおかしいのか、坂田が普通と思ってはいけない。あいつは本当に変な奴だから。
仏教に祈りをささげてぶつぶつと言っているのは?武士よりどっちかというと坊さん見てえだもんな、まーしぃは。
では、暇さえあれば本を読んでいる奴はどうだろうか。ある意味可笑しいか。主の俺より蔵書の位置を知っているセンラは。
うちの家臣は本当に頭がおかしいなと、俺は軽く笑みをこぼす。
そんな大事な家臣にまで嘘をついてでも、俺は吉原に行きたかった。
格子越しに見える、あの女に会いたくて仕方がなかったから。
もっと話したい、もっと知りたい。その思いを押し殺しながら、下級武士を装って声をかけた。
「そなた、今日の昼ぶりだな。」
驚き、少し動揺した女。やはり声で俺の存在に気づいたか。見込んだ通り過ぎて怖い。
この気持ちにどんな名前がついているのかはまだわからない、だが、俺は今楽しくて仕方がない。
初めて雪を見た時の子供のように。
「今日の・・・。」
「しっ、あまりうるさくするな。お忍びで来ているんだ。そなたに興味を持ったからな。今日は来てみた。」
そうなんだ、興味を持ったんだ。と、俺は心の中で叫ぶ。
興味だけじゃ片づけられない気持ちだとはなんとなくわかっていたが、今はそういうことにしておこう。
いずれ分かるはずだ。今はこいつの素性を知りたい。
「あまり女に興味がなさそうなお顔をなさっておりますが?」
ふふ、いい、いい。かなりいい。俺の見込んだとおりだ。
興味、といったら他の女はすぐに食いつくだろう。今この場であっちから夜のお誘いが来てもおかしくはない。だって遊女だからな。
だがこいつはかまをかけてきた。この言葉を真に受けたふりをして俺が帰ったとしてもいいように。
「女には興味はないが、お前にはなにか魅力を感じてなァ・・・っと、お兄さん。この子、貰っても大丈夫か?」
「ええ。って、貴方は・・・・?」
気づかれたらそこで終了。
でも俺は危険をおかしてまでこいつに会いたかったんだ。
その気持ちだけは本当だ。嘘をつかない。
「そなた、俺とお手合わせをしてくれぬか?」
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時