卅陸の巻 ページ47
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熱い熱い、頬が熱い。
全く坂田の野郎、いったい何を考えているのかがわからない。ただの女たらしのようには見えなかった、顔が良いというのはずるいものだ。
自分がこんなにも純粋であるなんて知らなかった。遊女をやっていたから相当穢れた身だと思っていたのだが、やはり体は正直なようで。
とにかく、渉様の前でこんな顔しちゃいけない。落ち着け私、遊女時代を思い出せ・・・一日に二人を相手することだってあっただろう、落ち着け。
ふぅ、と一息ついて渉様の部屋の襖を開けた。
「失礼します。」
豪華な部屋。流石大大名の嫡男とでもいうべきであろうか。どこをとっても秀でており、難癖のつけようがない。
だが、部屋を見渡すと渉様の姿は見られない。留守なのだろうか、いや、呼んでおいてほったらかすくらいいい加減な人ではないと思うが。
「渉様・・・?」
「遅い、A。こっちだ。」
見ると縁側らしきところに座って酒を飲んでいる渉様の姿が見えた。ここには顔かたちが整っている人しかいないのか、と疑ってしまうほどに渉様も美男である。
座っているだけでも絵になるなぁ、と少しため息をつきたいくらいだ。
「すみません、」
「ん、なんで呼んだかわかるか?」
翡翠の目が月に照らされ爛々と光る。美しすぎて逆に怖いと思ってしまうほどに妖しげに、かつ綺麗に光っている。私と渉様しかいないこの部屋は、冷たくも張り詰めた空間を紡ぎだしている。
雰囲気にのまれどう答えたらいいのかわからず、黙っていると渉様は口元をほころばせた。
「怖いのか?ならば・・・。」
盃を置き、私に向き直る。江戸時代とはいえ何人もの人を殺めてきたであろう武士の目・・・ここに来る前からこうなることは予想していたのだが、やはり真っ向から見られると逃げたくなる。そして静かに私の顎へ手が忍び寄り、持ち上げられる。
「動じないな。流石元遊女だ。」
「ええ、なんとなくわかっていましたから。」
「普通はもう少し初心な反応をするんじゃないのか?」
まぁ、元遊女だし。と渉様を見つめ返す。
こんなくらいじゃ動揺しないように訓練は重ねられたし、渉様もそのことをわかっているはず。
数秒間程だろうか。お互いに睨みあいをしたあとに、私の顎から渉様の手は離れ、次は髪の毛をいじり始めた。
「結局、何をなされたかったのですか?」
そういうと渉様は笑って答えた。
「歓迎だ。」
そして私はこう思う。反応を楽しんでる辺り確信犯だと。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時