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今より先へ ページ43

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「逃げたり帰ってきたり、随分と忙しそうで」



皮肉たっぷりに万里が言う。
あいにく反論できる立場にはない。



『お節介なじいさんに説教されてさ。…そんなことより、』



滅多に下げない頭を思い切り下げた。
監督さんの「あ、頭を上げて?」という言葉を聞いて、腰の位置を戻した。



『皆には迷惑かけた……ごめん』

「A…」

「お前も謝れんだな」

『人に誤ったのなんて初めてだよ。だけど、さすがに今回は謝罪しないと気が済まないんだよ』




出ていったのは2度目なのに、それでもこうやって心配してくれた。
今までそんな経験なんてなかったから、戸惑って意地張ってたんだろうななんて思う。



「許す訳ねえだろ。辛い過去があったからってなんだ、2度も勝手に逃げ出すような人間をまだ劇団に残すっていうのか? 慈善事業じゃねえんだからよ」

「それは俺も同感だ。今日は稽古を切り上げてお前の捜索を始めたんだ、その時間でどれだけスキルを磨けたことか。それに飯代だって……」

『流石にそこまでおこがましいことは言わねえよ。バイトしながらここに住まわせてもらいながら、MANKAIカンパニーに通わせてもらおうって考えているんだ』



ハルに視線を向けると「もちろんいいよ」という風に微笑みながら頷いた。



「宛はあるの」

『少し話したことがあったかな、俺の父親が家具屋でさ色々と教え込まれてて…簡単な家具とか作るの得意なんだ』

「前に見たけど、結構センスあるよな」

『どうも。それで依頼を何件か貰ってるからっていうのと、ハルの手伝いで細々と生活していくよ』




母親からの迷惑な仕送りもあることだし。
それは口には出さないけど。



「今まで通り稽古に来てくれるってこと?」

『もちろん。監督さんがよければ、だけど』

「ウエルカムだよ! Aくんの演技は人を惹きつけるからね。演技が好きっていう気持ちが聞けて良かった!」



眩しいくらいの笑顔。
差し出された手と握手を交わした。

その後、一通りの説明と説教を左京から受けひたすら謝ることとなった。


こんな簡単に許されるとは思わなかったけれど、まだ俺の居場所があるという事実に胸が暖かくなる。
これは今まで以上に成果を出さないと。



…期待してくれる仲間のために。



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光→←光と闇



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あーか(プロフ) - 続き楽しみにしてます。 (2020年4月3日 17時) (レス) id: 460cee1a24 (このIDを非表示/違反報告)
哲弥 - あの…もう終わりですか? 俺楽しみにしてるんで、頑張ってください! (2019年6月6日 17時) (レス) id: 9dda0ba0f7 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ひなさん» ありがとうございます!精一杯書かせていただきます! (2017年9月6日 21時) (レス) id: 77b318de68 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - サカナさん» ありがたいお言葉…励みになります!ありがとうございます! (2017年9月6日 21時) (レス) id: 77b318de68 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - 続きとっても楽しみです!頑張ってください! (2017年9月6日 18時) (レス) id: 9dcf28c287 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノア | 作成日時:2017年6月7日 22時

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