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それから、気が遠くなるような年月が経った春の日。彼女達が生きた世界は、鬼も鬼殺隊もない、平和な世の中となっていた。
人々は真新しい服に身を包み、桜並木を歩いていく。
「おーい、禰豆子!!行くぞ!」
「むー!」
「禰豆子ちゃぁぁん!!制服姿可愛いぃ!!」
「オイ、オマエら俺様についてこいッ!」
四人の少年少女達もまた、学校へと足を進める。彼らが通うのは、中高一貫であるキメツ学園。騒がしい四人の横を少女が通り過ぎる。
『善逸も伊之助も相変わずだなぁ。炭治郎、パン屋さんって……禰豆子ちゃんは制服、似合ってるね』
「え?」
自分達を知っているような口ぶりに急いで振り向くが少女の姿はない。鼻に残るのは、あの大好きな匂い。耳に残るは、あの暖かな音。
誘われるように、彼ら四人は走り出した。
*
「この時期に地味に転校してくるなんてなぁ」
「ここの生徒は皆優しい!!直ぐに慣れるだろう!」
「……担任の悲鳴嶼だ。よろしく頼む」
職員室の中ではそんな会話が繰り広げられていた。目の前の少女は二年生にあがると同時にこちらに越してきたのだ。
『天元さんが美術の先生って心配なんですけど。杏寿郎さんと行冥さんは似合ってますね』
「アァ?ンだと、って……は?」
少女の言葉に反論しようとしたが、見当たらない。けれど、先程の逆光に照らされた少女の笑顔には見覚えがある。
三人は迷うことなく、職員室から出た。
*
「オイ、玄弥ァ。高二では赤点取んなよォ」
「う、頑張るよ……兄ちゃん」
廊下では生徒と先生が肩を並べ歩く。その姿は、仲の良い兄弟そのもの。そんな二人の少し先に少女が現れる。
『玄弥と実弥さん、仲直り出来たんですね!!良かったぁ』
「え、……待て!!」
嬉しそうに、少しだけ泣きそうに笑った彼女の笑顔に呼吸がとまる。気づくと、彼女はくるりと向きを変え離れていく。
二人はその後ろ姿を、追いかけた。
*
「しのぶちゃん!お菓子、持ってきたの!」
「あら、良いですねぇ。カナヲも食べましょう」
「はい」
保健室では女性達が談笑していた。お茶を入れようと、カップを手に取った瞬間、少女が扉の近くに立つ。
『蜜璃さんのお菓子とっても美味しいんですよね。私も混ぜてくださいよしのぶさん、カナヲ』
「うそ、」
振り向いた時には、少女の姿は消えていた。驚きでカップが落ちる。甘味好きのあの子が浮かぶ。
落ちたカップさえ気にせず、三人は保健室を出た。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時