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sin,8 ページ9

□■

『あのさ、お化けども追っ払いたいんじゃないの?』

「ふなっ!何するんだゾ?!離すんだゾ!」

炎の中にいる狸の頭をひっ掴む。コイツ炎を使う時、目を瞑っている。このまま火事でも起こされたら、いよいよ私は行き場が無くなるのに。


『それとも、あのお化けどもの餌になりたいわけ?』

「イーヒッヒッ!美味そうだなぁ」

「ふなっ!……オイ、オマエ!お化けがどこにいるかオレ様に教えるんだゾ!」


その言葉に、ニヤリと口角があがる。意外と話がわかるやつで助かった。


『まかせてよ』


振り返れば、無数のゴースト達。雨漏りよりも、先にコイツらを何とかしないと。

(さーて、お化け退治といきますか)

■■


『右!次は、左!』

「!!当たったんだゾ!オマエ、そのままオレ様に教えるんだゾ!」

『はいはい……っと、次上からくるよ!』


偉そうな口を叩いていただけはある。炎の勢いは凄く、みるみるうちにゴースト達が怯んでいく。


『そのまま、一気に畳み掛けて!!』

「ふな"ッー!」

「ヒィッ!消されちまう〜!!」


一際大きな炎が上がったかと思うと、ゴースト達が一斉に消えた。安心して、ホッと溜息をついて辺りを見渡して気づく。


「はぁ……はぁ、やったんだゾ!」

『まだだよ、もう一匹いる』


私達のいる場所から少し離れた所にずっと、立っているお化けがいた。月の光が届かないのか、そこだけ真っ暗でよく見えない。


「?何言ってるんだ、オマエ!もうどこにもいないんだゾ」

『え?』


ゴースト達が当たり前のように視えているから、忘れていた。狸の不思議そうな顔に、状況を察する。奥の奴は、視えていないのだ。考えてみれば、さっきのゴースト達と纏っている雰囲気が違う。

再度、奥のソイツに目を向ける。ばっちり、目が合ってしまった。黒い墨を溶かしたように、光の見えない瞳と。


「オマエ……オレガ、ミエテ、」

『ごめん、気の所為だったみたい!凄いね、狸!!』

「オレ様は狸じゃねぇって言ってんだろーが!!」


即座に目を逸らして、狸に笑いかける。横目で様子を伺えば、ソイツは少し悲しそうに吐息を漏らして消えていった。

(また視えないフリ……やっぱりどこの世界でも変わらない。私には、何も出来ない)

少しだけ膨らませてしまった期待が、一気に萎んだ。


「夜食を持ってきましたよ。私、優しいので」


息をついたのと同時に、芝居がかった学園長の声が廊下に響いた。

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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年4月24日 13時

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