sin,12 ページ13
□■
「Aさん逃げようとしてるの分かってますからね？……グリムくんの監督を任せたはずでは？」
『げ、バレた』
2人を捉えた、学園長の怒りが私へと向く。知らないフリしようと思っていたのに、学園長は後ろに目でもついているのだろうか。
『これでも一応、止めたんですよ？』
「本当ですか？まったく……君、学年と名前は？」
「エース・トラッポラ。……1年デス」
エースが名乗ると、学園長は私達に大食堂の窓拭き100枚しろと言ってきた。2人は不満の声をあげたが、学園長は聞かない。……とりあえず、
『グリムはリード付けよっか』
「い、嫌なんだゾ！大体、止めなかった、オマエも悪いんだゾ！」
この狸はリード付けとかないと、駄目な気がする。私の言葉に、猫の如く木の上に逃げるグリムに何度目かの溜息が零れた。
■■
「クタクタなんだゾ〜！それなのに、これから大食堂の窓拭きなんて……」
『自業自得って言葉知ってる？』
「うぅっー……でも、あのエースって奴も悪いんだゾ！しかも、全然来ないんだゾ。オレ様を待たせるとはいい度胸だ！」
全ての掃除が終わって、2人で大食堂で待って結構経っている。予想はしていたが、本当に来ていない。
「まさか、アイツ逃げたんじゃないだろーな！」
『探しに行った方がいいかな？』
「おう！罰をオレ様たちだけに任せて逃げるなんて、許さないんだゾ！行くぞA！」
このまま追いかければ、また何か起こるだろう。でも、こっちは大人しく罰を受けてるんだから逃げて貰っては困る。大食堂を飛び出してエースを探しに走り出した。
『グリム。エースが、どこにいるかわかってるの？』
「……わからないんだゾ」
そうだろうと思った。無難に、教室に向かおうとすれば笑い声が聞こえる。振り返っても、何もいない。声だけが聞こえるのだ。
「私たちの声が聞こえる子がいるよ」
「ほんとね、不思議。誰かを探してるみたい」
歌うようなその声に、グリムは反応していない。私だけが聞こえるのだろう。声はそのまま、話し続ける。
「貴方の探している人なら、東校舎の奥へ行ったよ」
『そう、ありがとう』
「？A、何言ってるんだ？」
『んーん、こっちの話！東校舎の奥に行ってみよう！寮に繋がる扉があるみたいだから！』
グリムを抱えて走り出す。後ろから聞こえていた声は可笑しそうに笑っていた。
「いくら視えないフリしたって、意味無いのにね」
「可哀想な女の子」
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作者名：ちょこもち | 作成日時：2020年4月24日 13時
