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sin,10 ページ11

□■

「ふわっ〜、スゲーんだゾ!この7つの石像は誰だ?」

『さぁ?でも、この石像たち見たことある気がするんだよね』


指定されたメインストリートに行けば、予想以上に広くて唖然としてしまった。道を囲むように、置かれている石像はどれも大きく圧倒されてしまう。けれど、初めて見た気がしないのは何故だろうか。


「このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ」

「ハートの女王を知らねぇの?」


グリムの言葉に、答えた人がいた。いつの間にか後ろに立っていた男の子は、左眼の部分に真っ赤なハートが描かれている。

ハートくんが説明してくれることをまとめると、先程の石像はハートの女王という人らしい。規律を重んじる厳格な人で、少しでも破れば即打ち首にされたとのこと。


「こ、こえーんだゾ!」

「クールじゃん!オレは好き。優しいだけの女王なんてみんな従わないだろ?」


ハートくんの言葉に、心の中で納得する。が、ハートの女王の石像の周りには黒い靄がかかっていた。恐らく私以外には視えていない。

(そこまで徹底的にしていれば、恨まれただろうなぁ)


「確かに、リーダーは強いほうがいいんだゾ。っていうか、オマエは誰だ?」

「オレはエース。今日から、ピカピカの1年生。どーぞヨロシク」


軽い挨拶と共に、ヘラりと笑ったエースの顔は何処か胡散臭さが混じっていた。


「オレ様はグリム!大魔法士になる予定の天才だゾ。コッチがA。オレ様の子分なんだゾ」

「A?珍しい響きの名前だな」

『グリムの飼い主のAです。よろしくね』


私の言葉に、グリムが抗議の声をあげるが無視だ。2人で雑用係だが、子分になった覚えは毛頭ない。

私の名前に首を傾げていたエースがよろしくと返す。ーーやっぱり、ちょっと胡散臭い。

私の思いを他所に、グリムは次々と石像の名前について聞いていく。

努力して王の座を得た、ライオン。願いを叶えてくれる、海の魔女。王様に仕えた、砂漠の大賢者。美への努力を惜しまない、女王様。誠実な、死者の国の王様。魔法と呪いに長けた、茨の魔女。

並べられた、7つの石像はとても素晴らしいことを成し遂げたらしい。けれど、そのどれにも黒い靄がかかっていて私はグリムの様に純粋に尊敬の念をおくれない。


「クールだよな〜……どっかの狸とは違って」

「ふな"っ?!」


(やっぱり、こうなったか)

さっきの胡散臭い笑顔を引っ込め、馬鹿にしたように大笑いをしているエースに溜息が零れた。

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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年4月24日 13時

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