雷の音がみっつ ページ7
善逸side
悶えるほどの激痛と共に、目を開けた先には真っ暗な空が広がっていた。
鬼の音が消えたから、あぁ。倒したんだなってぼんやりと理解出来た。良かった、と心の底から安心した。
(めちゃくちゃ身体は痛いけどね!!なんなの!?呼吸するのもやっとなんだけど!!)
毒が身体中にまわってるのがわかる。
『善逸!!大丈夫?!』
(あぁ。激痛の中でも、苦しくても、この子の声だけはよく聞こえるんだなぁ)
ゆらゆらと景色が揺れるけど、段々と視界が目の前のAの姿を捉える。
「!!Aっ!大丈夫、だった?」
俺が見る限り、Aに怪我はない。だけど、もしかしたらと思い聞くとAは一瞬驚いた顔をしてから
『大丈夫だよ!善逸が守ってくれたから!!』
少しだけ悲しそうに笑ってくれた。ーー俺ってやっぱり駄目な奴だな……Aには笑ってて欲しいのに、こんな顔をさせちゃうんだから。
そんな意味で、自虐的な言葉をはこうとすると遮られる。同時に、暖かくて柔らかいAの手が俺の手を包み込んだ。
『善逸がいたから、私怪我しなかった!!善逸は駄目な奴なんかじゃない!凄いよ!』
俺、いっぱい音聞いてきたからわかるんだ。Aが本気でそう思ってくれてるって。
沢山の人が俺を駄目な奴だと罵って見捨てていく中で、出会った頃から君は俺に期待してくれていた。
それがどれだけ嬉しくて救われたか、Aはわからないだろう。
「へへ、嬉しいや」
体は痛くてたまらないはずなのに、自然と笑えた。
ねぇ、A。俺ね、たまに夢を見るんだ。すっごい幸せな夢。俺は誰よりも強くて、Aも炭治郎もついでにクソ猪……周りの人間全てを助けるんだ。
じいちゃんが俺にかけてくれた時間が無駄じゃなくて、Aの期待に応えられるような夢。
でも、それももう叶わないかも。ーーあれ?最期が、Aに看取られるって俺結構幸せじゃない?
そう聞こうとすると、Aは震えていた。悲しみと何故か、怒りの音が強く聞こえる。
__諦めるな!!
不意に言葉が脳内に響いた。
(あぁ、そうだ。こんな所で諦めちゃ駄目だろ俺!!好きな子に、Aに、こんな顔をさせたまま死ぬとか男としてないよよね?!)
そう思うと、重たかった筈の頭が働いて自然と身体が呼吸をしていた。
『善逸……!!』
Aの音が少しだけ明るくなった。
ここで死んだらきっと、じいちゃんにも炭治郎にも怒られる。何より、Aの笑顔が見れなくなる。
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時