花弁がろくじゅうさん ページ28
◇◆
「A……」
私の言葉に、周りがシンと静まり返る。誰も何も言わない中で、炭治郎が私の名前を呼ぶ声が響いた。振り返れば、赤く綺麗な瞳から大粒の涙を溢れさせている。
「君らしい答えだね……確かに、禰豆子が人を襲わないという保証は出来ない。けれど、禰豆子の為に3人が命を懸けている。なにより、」
先頭に立って、反対していた不死川さんと杏寿郎さんを見つめ、お館様は諭すように話す。ほんの一瞬、お館様と目が合った。
「生の呼吸の使い手である、Aが実際に関わった上で信じると言った。これを否定するためには、否定する側もそれ以上のものを差し出さなければいけない」
私の意見なんて出来れば石ころ程度に思っておいて欲しい、切実に。しかし、お館様にここまで言わせる程、生の呼吸は異質なのだろう。
不死川さんも杏寿郎さんも、その言葉の重みに押し黙ってしまう。更に、炭治郎が鬼舞辻無惨と会ったこと話せば一気に場がざわめいた。
炭治郎が質問攻めにあっているのを見て、お館様が静かに人差し指を口に当てる。それだけで、全員が黙るのだから凄い。
鬼舞辻が炭治郎と禰豆子ちゃんに対して追っ手を放ったこと。禰豆子ちゃんが、鬼舞辻の手がかりになるとお館様は言う。
「わかってくれるかな?」
本当にこの人は凄い人だと思う。ここにいる人達は皆、少なからず傷を抱え、鬼を恨んでいる。そんな彼等を黙らせてしまう理屈と尊敬を持ち合わせているのだから。
「わかりません、お館様」
けれど、この人は、この人だけは認めなかった。不死川さんは歯ぎしりをし、鋭く木箱を睨みつけると、自身が持つ刀で自分の腕を斬りつける。
見ているだけで、痛々しい。溢れ出る血の多さに、短く悲鳴が漏れ出た。
「お館様……!!証明しますよ俺が鬼という物の醜さを!!」
(複雑だなぁ、ほんと)
木箱に自分の血を垂らし、薄く笑うその瞳には確かな憎悪が宿っている。その姿を見ていると、禰豆子ちゃんを許せないのも仕方ないと思えてしまう。
私だって、鬼滅の刃という漫画を知らずこの世界に来て炭治郎に出会っていなかったら……きっと、炭治郎を庇いはしない。
木箱から出てこない禰豆子ちゃんを見て、伊黒さんが日なたでは駄目だ、と言った。それに、不死川さんは木箱を抱え屋敷の奥へと入る。
「禰豆子ォ!!やめろーっ!!」
不死川さんがスラリと刀を抜いたのを見て、炭治郎が叫んだ。
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時