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業の事を考えていると、いつも胸が苦しくなる。



10年前、確かに私達は思いあっていた。



業だって、きっとそれを否定はしないだろう。



だけど今は?



思わせぶりな態度をとるのは変わらない、だけどそれに思いが籠っているようには思えない。



殺せんせーに散々からかわれていた昔みたいに顔も赤らめないし、頻繁に会ったりもしない。



約2週間前…ポアロに渚と一緒に来てくれた日。



それより前に会ったのは、年単位で前だろう。



同窓会にはお互い顔を出せなかったし、連絡もほとんどとっていなかった。



もしかするとその間にも愛美ちゃんとは会っていたのかもしれない。



「なんだ…もしそうなら勝ち目なんて…。」



再会したあの日から、無かったんだ。



いつから部屋に入れてるのかな。



数日前?数ヶ月前?数年前?



分からない。



はぁ、と溜息をつく。



するとぶわっ…と勢い良く風が吹いた。



目の前の桃色の桜が舞う。



花びらが数枚こちらへ飛んできた。



鼻の頭にちょん、と乗ったそれを取る。



そしてそれをふぅ…と吹いた。



ヒラヒラと風に乗り飛んでいく花びら。



凄く綺麗で、美しい。







"A。"







ふと、優しい声で呼ばれた自分の名前。



声の主は顔を見なくても分かった。



振り返りたく、ないな。



今顔を見たら泣いてしまいそうで怖い。



きっと彼は私が振り返るまで待つつもりだろう。



昨日のように肩を掴まれたりされない。



「っ……。」



どうして平日のこの時間にここに居るの、どうして私の居場所がわかったの、どうして…どうしてそんなに貴方のことを好きになってしまうの。



言いたいことなんて、聞きたいことなんて、沢山ある。



だけどそれが溢れてしまったら、嫌われてしまいそうで…今の関係が壊れてしまいそうで。



愛美ちゃんという友達まで失ってしまいそうで…。



臆病な自分が嫌になる。



中学の時はやんちゃしてて、そんなこと考えなかったのに。



友達なんていらないって、思ってたのに。



…これも全部、殺せんせーや業…皆のおかげかな。



黙り込んでいると、もう一度"A"と呼ばれる。



やめて、そんな優しい声で呼ばないで。



駄目、なんだよ…。



目からこぼれそうになる水を必死に堪える。



唇を噛んでいると、また…これが最後と言うように名前が呼ばれた。



もう無理だよ…業っ…。



私は振り返り、声の主へと抱き着いた。

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ヒヨコ(プロフ) - ホントにおもしろかったです!次の作品も楽しみにしてます! (2020年6月14日 19時) (レス) id: a71ea1e4cf (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - 夢主のファーストキスってビッチ先生なんじゃ (2020年6月1日 18時) (レス) id: 348cf1e7b1 (このIDを非表示/違反報告)
Mocha(プロフ) - 面白かったです! (2020年5月13日 21時) (レス) id: 87128bc86a (このIDを非表示/違反報告)
くるみっこ - あのすみません、16の、カルマのセリフの「どうやらちがうみたい」が「どうやるちがうみたい」なってますよ。 (2020年5月5日 17時) (レス) id: 65e7743a54 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - *利茄*さん» 何の小説ですか?題名、教えて下さい! (2020年5月4日 12時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セツ | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年4月3日 17時

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