◇月下美人 4 ページ31
「ねぇ…智?」
「うん?」
君の名前を聞いたのに答えてくれなくて
教える気がないのかな?
と寂しく思ったけれど
俺の名前を可愛く呼ぶ君に…
もういっか…と思ってしまった
俺はまた釣り竿にエサをつけて
ヒュッと音を鳴らして海へ投げた
「智…」
また名前を呼ばれて
嬉しくて
何だろう?と思って
君に振り向けば
目の前に君の顔
潤んだ瞳が俺を見つめていた
…キレイな琥珀色の瞳だ…
不自然な距離なのに
月明かりに反射して
キレイだと思っていた瞳の色がわかって
喜んでいる自分がいた
まただんだんと近づいて
君の
瞼が閉じようとして
…あっ…瞳が見れない…
と思っていたら
チュッと
軽いキスをされた
「えっ…」
ふふっと笑い
俺の頬を君の冷たい指先がツツッーと滑り
何もなかったかのように離れ
そのまま
「じゃあね?」
とホントに
ホントに…消えてしまいそうにみえて
"待って!"
と強く思ってしまって
咄嗟に君の腕を掴んだ
その腕が余りにも細く
掴んだ俺の力で簡単に折れてしまうんじゃないかと思うくらい華奢で
胸が締めつけられるようだった
「帰るの?送るよ…どこ?」
「くふふっいいよ…大丈夫。釣り…そのまま楽しんで…ね?」
「いや…もう、釣りはいい。送るよ…」
「釣り…いいの?…ホントに…大丈夫だよ?」
背丈はそんな変わらないのに
なぜか上目遣いで見られる
その瞳に見つめられ
心臓が
ドキドキと自分の耳にまで
聞こえてきそうなほどなっている
送るなんて…
口実だ…
たった
ほんの何分間だ
それだけで
俺は君と、もう離れたくないと思っている
今まで周りの女のコたちが
一目惚れしたんですよねー!
とか
数少ない人からの
告白で
ひと目見たときから…
好きです…
なんてことを言われたことがあったけど
俺のことを何も知らないのに
どこを
どーみて好きになるんだ?
と…
思っていた。
その彼女たちに俺は心の中で
もうすでにこの何分間の間に
何度誤っただろうか…
自分は
一目惚れしてしまったからだ
23人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:REN | 作成日時:2020年4月17日 11時