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変わってないから ページ4

「うん、嫌だ」


そう言われた時に、自分の頰が自然と持ち上がるのがわかった。形的には、私は振られている。それは、まぎれもない事実であって、現実だ。

人は、こんな私を見ておかしいと笑うのだろうか。振られて笑うなんて、よっぽど拗れているやつだと、指をさして。

国見先輩は冷たいように見えるけど、そこまで失礼な人じゃない。仲良くない人に、こんなことを言うなんて絶対にしない人だ。

こういうと聞こえは悪いけれど、私は国見先輩をずっと見てきた。先輩が私のことを嫌っているわけではないということは分かっている。


「なんで笑ったの」
「国見先輩が、私のこと憎からずに思ってくれるからです」
「そう思う理由は?」
「先輩、嫌いな人にこんなこと言いませんもんね。もっと冷たい」
「……そうだね」


はぁ、とため息を吐く姿も文句なしにかっこよかった。吐いた息が、白く染まって空気の中に溶けていく。

もうそろそろ、時間だろうか。女の子にかかった魔法は、12時になれば解けてしまう。私がかけた魔法も、もうすぐ時間切れだ。

想いが叶うなんて、これっぽっちも思っていない。自分の気持ちに、国見先輩と仲良しだと勘違いしてしまいそうになる自分に、けりをつけにきただけだ。

コートのポケットで、スマホが鳴り響く。あぁ、12時の鐘が鳴ってしまった。その無機質なデジタル音は、意気地なしな私の片思いを終わらせるのにふさわしい音だろう。


「それじゃ国見先輩、また会えるといいですね」
「校区が一緒なんだから。また会うだろ」


その質問には答えずに、くるりと国見先輩に背を向ける。短く切った癖っ毛の髪が、ふわりと冷たい空気を切りつけた。

この長さになった理由が先輩だなんて、本人は思ってもいないだろうか。察しがいい先輩だから、気づいているだろうか。

見上げると、目に刺さるほどに真っ青に晴れ渡った青空が、視界いっぱいに広がっていた。

私は、あの物語の女の子とは違う、国見先輩も、あの物語の王子様とは違う。落とし物はしない、否、するわけには行かないのだ。


「それじゃあ、国見先輩。楽しかったです」

雪が溶け、うっすらと汚い土が見え始めた地面を、思いっきり蹴る。魔法が解けた私を見られたくないから、ガラスの靴は両手で隠し持って。

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すず - めっちゃいい話でした! (2018年11月3日 18時) (レス) id: a841e08a2e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あべかわもち | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年11月3日 16時

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