魔法をかけて【国見英】 (ページ3)

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変わったようでページ3

金田一が、目を見開いて口をパクパクさせる。この状況に脳が上手くついていけていないようだ。

いや、ついて行けてないのは金田一だけじゃない。そんなことを言っている俺も、この唐突な告白に対応しきれてないのだ。

どこの中学生が、久しぶりに会った先輩に、真顔で、好きですと言ってのけるだろうか。少なくとも、俺は今まで見たことがない。

「は……？」

冷静も何もあったもんじゃなかった。なんとか口から、その一言だけを絞り出す。冗談にしたって笑えない。

何より、国部はこんな冗談を言うやつじゃない。俺が知っている国部は、中2にしてサンタや魔法使いを信じているような、バカ真面目でバカ正直な後輩だ。決して、貶しているわけではなく。

「あ、もしかして冗談だと思ってますか？違いますからね」

もしかしたら、見ない間に変わったのかもしれない、という、かろうじて残っていた淡い期待を、躊躇なく叩き潰した。去年から思っていたのだがこの後輩、まじめで熱心なくせに、相当食えないやつだ。

今だって、こっちの気持ちを見ていないふりをしている。そんなことを真顔でやってのける人は、こいつしか知らない。及川さんでさえ、笑顔を浮かべるのだ。

「で、どうしろと？」

俺のその返しに、金田一が再び固まる。国部も表情豊かな金田一の反応が気になったらしく、少しだけそちらに目をやった。

大きな目にびびったのか、金田一がどこぞのお笑い芸人のように、手でどうぞの仕草をする。国部の表情が少し和らいだようにも見えたが、それも一瞬だった。

「付き合ってくださいって言いますね」

また悪びれる様子もなく、平然と爆弾を落としにかかる。まるで、操られる魔法にでもかかっているかのように、淡々とした言葉だった。

「分かった。けど、嫌だ」

別に国部のことは嫌いではない。むしろ、嫌いでは無かったからこそこんな取ってつけたような告白を受け入れるのは嫌だった。

受け入れてもなんの支障もないはずだけれど、そうしなかったのは、ただのかっこつけかもしれない。それでも、考える前に口が動いてしまったのだ。

てっきり悲しそうな顔をするかとでも思ったが、国部は違った。今まで真顔を作っていた白い頬が、急に持ち上げられ、彼女が笑みを浮かべている形になる。