月下美人の君【蒙恬ルート.2】

脣星落落.5 ページ36

ぷにゅ…と蒙恬の大きな手にほっぺを包まれる。

蒙恬 「俺ばっかり…Aのこと好きみたい」


いつも思ってきた本音が、
思いの外ぽろっとこぼれてしまった。

…その瞬間Aの眉が不機嫌に八の字になる。

慌てて手をヒラヒラと振るが、
誤魔化すには遅かったみたいだ。



A「……恬、そんなこと思ってたの？」




蒙恬 「あー今のはちょっとなしの方向で…」




女々しいと分かっているからこそ、

時間を巻き戻して、
数秒前の自分を消してしまいたい。




Aから「そんなこと」という言葉が
心にチクっと突き刺さる。





頭に片手を乗せて、笑って誤魔化してみせるが

なぜか、Aは嬉しそうに目を輝かせた。





A「嬉しい……」



蒙恬 「………へっ？！」




A「私もずっと同じこと思ってたから！



…恬も同じこと思ってくれてたなんて、


びっくりしたけど、とっても嬉しいっ！」


そういって、「以心伝心だねっ」なんて笑う彼女。




……ああ。



どうして……こんなにも、




俺の心を掻き乱すの。




蒙恬 「……っ／／／」


嬉しい…なんて、こっちの台詞だよ。



熱が集中する顔では、そんな事言えなかった。


変わりに、指を絡めて手を繋ぐ。


そんな些細なことでも嬉しそうに笑い
蒙恬の照れる顔に気付かない鈍感さに、
初めて感謝した。

⭐⭐

後ろ姿からも、その背中からハートを撒き散らす二人を自然と皆、振り返って見てしまう。

知り合いとなれば、より面白がった顔か

見たくもない物を見たと嫌そうな顔か

はっきり二極化に分かれた。


河了貂 「あっ！Aと蒙恬だ！

…すっかり仲良し夫婦って感じだね」


信 「……お騒がせ夫婦の間違いだろっ」

ケッと面白くなさそうに、顔をしかめる信。


羌瘣 「…ッ！(あれが噂の恋人繋ぎ！？)」

男女交際のロールモデルをマジマジと見つめる羌瘣。


飛信隊としての帰りなのか、
ばったりと道中すれ違った。


A「あっ！信…！」

信 「よー！！A！……と蒙恬」


蒙恬 「……俺はついでか」苦笑い


あまり甘い雰囲気の二人を邪魔したくなかったが、
見つかってしまったものは仕方ない。
すると、久しぶりの再会なのか女子達はお互い黄色の声で歓喜しあった。


A「貂と瘣もいるー♡ 会えて嬉しいっ！」

お気に入りの二人の姿に、
ダッシュで走り出すA。
二人も同じように、幸せそうな顔を浮かべた。

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