月下美人の君【王賁ルート.2】 (ページ4)

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Night Diver.3 ページ4

星が夜空を輝かせる暗闇で、薪を燃やした火が互いの姿を写す。波の音しか聞こえないこの場所は、世界から隔離されたようだ。

…だが、
炎に照らされた彼女がいるだけで十分だった。

使命がある。
この役割に生まれたからには、
果たさなければならない責任があった。

俺は人の上に立つ者として、生まれた来た。

そう幼き頃より信じ、
戒め、そうある様に努力してきた。

だが…今はその全てが彼女と比べたら
霞んで見える。

王賁「(お前がいれば…俺は他に何もいらない)」

いつから
こんなに自分は不甲斐なくなってしまったのか。
だが、こんな自分は…不思議と嫌いになれなかった。

⭐⭐

王賁がAを見つめ、思案していると
ジロジロと見るその瞳せいで、
突如、乙女のように頬を赤くさせた。

A「…あんまり見ないでっ」

お互いに来ていた着物は、風邪を引かない様に
乾かしている。
男である王賁が上半身裸に対して、女であるAは胸をサラシで巻いただけだった。

変に勘違いされてしまったが、
ここ数週間、頭を悩ませていた彼女からの拒絶の原因も、元を辿れば同じ男の欲望のせいだ。

王賁「この前は…、その、……悪かった」

A「…！」

突然の王賁の謝罪に戸惑うA。
それは、前回呉服屋で突然彼女を拒絶し、
帰ってしまった事だとすぐ分かった。

王賁「お前を前にすると…

俺は自分をコントロール出来ない。

そのせいでお前に
無理強いさせてしまっていた事も多いだろう。

本当にすまない。…許して欲しい」

彼女を失いたくない。
その為だったら、
小さなプライドなんて簡単に捨てられた。

あの王賁が頭を下げるなんて…
そこまで彼を追い詰めてしまった事に、
彼女も後悔した。

A「そんな…！

私も…ごめんね。

嫌…とかじゃないんだけど、人前だとどうしても

恥ずかしくてっ…///」

思い出すだけでも、顔から火が出る。
つい先日まで生娘だった自分には、
まだその行為は羞恥しか感じなかった。

王賁「お前が嫌がる事はしたくない。

…これからは、人前では極力抑える様に心がける」

A「ほんとっ…？」

潔癖の彼は意外と、夜の部分は場所も時も選ばない。
だからこそ、天幕などで声を抑えるのも必死だった為、その好意は嬉しかった。

王賁「………努力する」

王賁から折れてくれるなんて…想像してなかったけど、彼に大切にされてると感じると、
とても嬉しかった。