ねぇねぇ、あのさ。【東海オンエア】

団子屋の看板娘 ページ15

sideりょう


名の通った武士を父に持つ俺の家は、権力のための政略結婚は当たり前だった

兄弟は親が決めた相手と結婚していった

そしてついに俺にも政略結婚の順番が回ってきた

城下町の団子屋の娘が好きだった俺は、どうにかしてその娘と結婚したかった

でもそんな話も受け入れてもらえるわけなくて、結婚したくもない相手との縁談は進んでいった



女「りょう様のような男前な方と一緒になれるなんて恭悦至極なことでございます」



「俺はお前を幸せにはしないよ、お前と結婚したいわけじゃないから」



女「側室の方がいらっしゃっても正妻は私でございます、お忘れないでくださいね」



こいつみたいな薄汚い欲に塗れた女より

団子屋の看板娘であるAさんと結婚できたらどれだけ幸せなことか

今日も彼女とむさ苦しい男たちが経営している団子屋へと足を運ぶ

男たちの中にいるAさんは、まさに掃き溜めに鶴の状況だ


『りょうさん！また来てくださったのですね』



「Aさんに会いたくて来てしまいました」



俺を見つけると花が咲いたように綺麗に笑うAさんは本当に美しい



「いつもの、お願いしていい？」



すぐにお持ちいたしますってニコニコしながら店の奥へ駆け出す彼女を見るだけで俺もにやけてしまう



『風の噂でお聞きしましたが、りょうさん結婚なさるのですか？』



思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまう



「ゲホッ、なんでその話を」



『お隣のお家のおばあさまがおっしゃってました、美人な方とご結婚なさるって』



少し寂しくなっちゃいますって言いながらお茶を飲む彼女に期待してしまう



「Aさんは、俺が結婚してしまったら寂しいんですか」



『寂しいなんて、身分不相応なこと申し上げてしまいすみません』



「寂しい時は寂しいって言ってください、俺がいつでも来ますから」



『りょうさんみたいな男前な方にそんなこと言われると照れてしまいます』



顔を真っ赤にしながらこちらを見るAさんの頭を撫でると、さらに頬を赤く染める




「そろそろ城に戻ります、今日も美味しかったです」




『またいらしてくださいね、ありがとうございました』




店を出ると、口元が緩んでしまうのを隠すように頬を叩いた





その姿を見ていた結婚相手の女には、要注意だなって考えながら城へと足を進めた









『あの女、利用できるなあ』




って彼女が呟いていたのは俺の知らない話

覚悟はできた→←合計10180円

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す