【本編】レイスの使者 (ページ2)

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1話【ジョセフ】ページ2

*

図書館【シルム】。
雨宿りの場所を求め、ジョセフはその図書館の扉を叩いた。

(精霊の御加護がありますように)

返事がない中、シルムの扉を開ける。
廃墟のように埃っぽく、ジョセフは咳き込んでしまう。

「誰もいないんでしょうか」

十字架をキュッと握りしめ、ジョセフは恐る恐る図書館に入る。
おびただしいほどの本の数が何故だかジョセフに威圧感を与える。

(寝る場所さえあればいい)

ジョセフは跪き、十字架を握る。

「主よ、忌まわしきゾンビ(悪魔)に襲われる民を導いてください。神よ、我らをお守りください。純の乙女よ、我らのためにお祈りください。父と子と精霊のみなによって、アーメン」

目を瞑り、一息にそう言う。
黙想しながらジョセフは静かに息をする。
すると乱暴に扉が開く音が図書館内に響いた。

「あぁ？チッ、先客いんのかよ……、まっ、どーでもいいけどな」

雨に濡れた靴を拭こうともせずずかずかと図書館に入り込む男性。
彼はジョセフには目もくれずソファに寝転ぶ。

雨音とジョセフの息をする音、彼の息をする音が響く。

「……あの、お名前は？」

「……答えたら何のメリットがあんだよ」

「僕はジョセフ・マーク・ベンソン。神父をしている者です」

「聞けよ」

苛立った様子の彼に対し、顔色も変えずジョセフは自己紹介をする。

「アイザック・キャンベルだ、気が済んだならいいだろ」

しっしと手を振ってジョセフに離れるように命令する。

「アイザック……ザックですね。ふふ、よろしくお願いします」

にこやかに微笑んだ後、ジョセフはアイザックからは離れた椅子に座った。
そしてまたコンコンとノックが聞こえたのだ。