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「え……?!れ、玲王……?」
それは、教室の隅の扉が荒々しく開けられた音であった。驚いて目を向けると、そこには見たことのない程怖い形相をした玲王がいて、脇目も振らずに一直線にAの方に向かってくる。
「え、ち、ちょっと、ま、まって!」
Aも、目の前にいたマナも、クラス中が動揺して騒めき始める。まさか、あの優しくて温厚な御影玲王が、殊更大切に大切にしていた幼馴染の腕を掴んで教室を連れ出す姿を見れば、誰もが衝撃を受けるに決まっていた。
「れ、玲王、痛いってば!」
何度か静止の声を上げるけれど、玲王は無言のまま周囲の目も気に留めずひたすらAの腕を引いた。何も答えてくれないことが、酷く恐ろしかった。玲王の後ろ姿しか見えていないのに、満ち満ちた怒りは殺気のように研ぎ澄まされているのを肌で感じる。
腕を引かれるまま連れて来られたのは、人気のない空き教室だった。玲王はAを部屋に押し込むと内側から鍵をかける。Aはその光景を見て瞠目した。逃げ場を失った小鳥のように、小さな鳥籠の中で怯えるAの目は、長年信頼してきた幼馴染に向けるものではなかった。
そして、大股で歩み寄ってくる玲王を、直立不動したまま見つめることしかできない。
「……おれさ」
「え?」
「俺は、お前と約束したんだよな」
ようやく言葉を発した玲王の確かめるような声は信じられない程低く、咎められているのがわかった。玲王が怒っている原因は、多分______いや、それしか思い当たらない。
「玲王違うの……私が約束を破ったのは悪いんだけど、その、あの子は玲王が好きなんだって!だから、上手くいってほしくて、それで」
「______ふざけんな」
「きゃ……っ」
言い訳をしようとしていた言葉を遮るように、玲王はAを壁に押しやった。そのまま両手首を縫い付けるようにして、Aの大好きな暖かいその手で拘束をする。
跡が残ってしまいそうなほど強い力で締め付けられて、突き刺すような顫動が背中を駆け巡り全身が震えた。
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黄泉(プロフ) - 七星さん» はじめまして、コメントありがとうございます!またこのお話をお読みくださり、面白いとのお言葉までありがとうございました!🥳 わっかります、むしろ、彼にならどんな手を使っても奪われたいくらいですよね笑 どこかでご縁がありましたら、またお願いします! (2023年2月7日 23時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
七星 - とっても面白くて、一気に読んじゃいました.ᐟどんな手を使ってでも玲王くんなら許しちゃうかもです(笑) (2023年2月7日 22時) (レス) @page34 id: 0897eb2537 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 真昼さん» はじめまして、コメントありがとうございます🙇♀️続きが楽しみだと言って頂けてとても嬉しいです!あと少しで完結になると思いますので、どうぞもうしばらくお付き合いの程よろしくお願いしますm(__)m (2023年2月4日 11時) (レス) id: fe076a4b2d (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 続きが楽しみです! (2023年2月4日 10時) (レス) @page19 id: 94c427d0c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年1月28日 10時