1.二人の関係 ページ5
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それから、私たちは二人で会うことが増えた。決まって場所はホテルか、私の家だ。
しかし、決してそれは恋人としてではない。『友達以上、恋人以外』というものだ。その響きだけを聞いて、なんて不毛な恋愛をしているのだろうかと勘違いする人もいるかもしれないが、最初こそ私はそれで幸せだった。
直球に言うならば、ミヒャエルとは身体の相性が良い。カップルのような無駄な外出デートをしないことも、記念日に悩まされることもない淡白な付き合いだからこそ、お互い自然体でいられるような気がしていた。
ミヒャエルについて知っているのは、名前だけ。それがそれ以上でもそれ以下でもない関係を示しているのは明確だった。
私は休みの日になると、適当にミヒャエルに連絡をとる。すると、ミヒャエルは決まって「今俺も連絡しようとしていた所だ」だなんて言葉を返してきて、今日は私の家で映画を流しながらスナック菓子を囲っていた。
それにしても、ミヒャエルはいつまで日本にいるのだろうか。それとも、既に日本に住んでいるのだろうか。以前から、少し気になってはいた。けれど、聞くまでに至れない。私たちはあくまで互いのことを深く詮索しない。それは、二人の暗黙のルールのようなものであった。
彼がこうして私の家に来ることはあっても、私はミヒャエルの家に呼ばれたことがない。たかが、身体だけの関係である私が高望みすることは烏滸がましいので何も言わないが、時々、虚無感を覚えることはあった。私は、どうしてこんなことをしているのか、と、急に現実を見させられることがある。
「ねえ、ミヒャエルってさ、普段何してるの?」
私を膝の上に乗せてながら、ミヒャエルはその私の頭の上に顎を乗せている。思い立って尋ねてみると、一瞬ミヒャエルの動きが固まった、ような気がした。
「そんなことを聞いてどうする?」
「なんとなく気になって」
彼は少しだけ悩むような空白を作ったあと、背後から私のお腹に腕を回した。彼の長い腕が私を捕らえる。主張された青い薔薇の刺青に目が行き、まさか人には言えないような裏社会の人間ではないかと思ったりもしたが、ミヒャエルに限ってそれはないだろう、と信じたい。刺青があるというだけで先入観に踊らされるのは、日本人の悪い癖だ。
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玉子ぷりん - 見てて「こういうのもいいな」と新しい扉がひらいた気がします!(?)完結おつかれさまです!これからもおうえんしてます! (2023年4月3日 22時) (レス) @page23 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - ひてゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます!また、このお話を最後までお読みくださりありがとうございました!ひてゃんさんに、そのように言って頂けてとても嬉しいです🍀またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします🙇♂️ (2023年3月5日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
ひてゃん(プロフ) - とてもおもしろかったです!!完結お疲れ様でした👏🏻❤️🔥 (2023年3月4日 12時) (レス) @page23 id: beb1a37d1b (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 悠さん» 悠さん、改めまして最後までお読みくださりありがとうございました!また、再びコメント頂けて嬉しいです🥰彼に人生狂わされたくて思いついた話なので、そのお言葉とっても胸に響きます😊今後ともご縁がありましたらよろしくお願いします🙏 (2023年3月4日 7時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 自分はウェブで見てるのでフォローとかができないんですけどツイッターも見てます! 改めてお疲れ様でした! (2023年3月3日 23時) (レス) @page23 id: 1f3484379a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年2月11日 16時