【ヒプマイ】営業先の人【観音坂独歩】

独 ページ16

始終心臓がうるさい


一二三以外を初めて家にあげた気がするし女の子、ましてやずっと俺が片思いしてきたAなんて……



前一二三が置いていった店からもらったらしいお菓子をたまに摘んで

俺の横でただこじんまりと座ってビールを飲むAはついてるテレビに視線を向けてるだけで見てなかった



ずっと虚ろな目でテレビを眺めてるだけ



やっぱり、1人出いた時よりも元気になったとはいえ怖いんだろうな



｢……無理するなよ……｣



なんとなく口から出た言葉にそのあと続けられなくなって


もう癖になってしまったAの頭に手を置いて追加のビールを台所の冷蔵庫に取りに行った



｢……ねぇ｣

｢……どうした？｣



声が聞こえて振り返るとからのビール缶を持ったAが腕まくりをして一緒に冷蔵庫を覗き込んだ



｢お礼に作る｣



覗き込んだときに耳から落ちた薄い茶色のセミロングの髪にドキドキした


Aは口の下に指を当てて質素な冷蔵庫の中を一通り見ると卵と明太子と牛乳をとって行った



適当に引き出しを開けたりして菜箸と器、フライパンを見つけてしばらくして火の音がした


菜箸と器と卵の当たる音がして、しばらくその後ろ姿に見とれていた



……結婚したらこんな感じ


いやまさか、ちょっと酔ってるからって邪念すぎる



開けっ放しの冷蔵庫のアラームにハッとして慌ててビールをとった



｢なに見とれてんのさ｣


｢うるさい｣



若干振り向いてニヤニヤ笑うAの頬にビールを押し付けた



1人でむこうにいても暇だしAの調理を見守ることにした



ビールを受け取ると缶を開け、ほんのちょっと明太子入りの卵に注ぐとちょっとだけ飲んだ



｢パパに教わった｣



パパ呼び……




卵をまたガシャガシャかき混ぜて、火にかかってたたフライパンに一気に注ぐといい音が部屋中に響いた


卵の様子を見守るAの横顔をなんとなく見つめてた



｢……なに｣

｢なんでもない｣



菜箸で軽く卵を混ぜて少し丸めてまた卵を注いでの繰り返しで全部巻き終わると火を消した


出汁の香りがお腹を減らした



｢できた、特性明太子だし巻き｣



なんとも満足そうにドヤ顔をかましたAは器を取り出してきたところからお皿を2枚取ってきた


｢美味そう｣

｢美味いに決まってるだろ？｣



柔らかそうなだし巻きを二つに分けてお皿に載せると上から少し醤油を垂らしてテーブルに持っていった




……結婚したくなってきた

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