【魔法と学園モノ】〜理不尽な世界でも君と笑いたい〜

第6話：魔法使い ページ8

ガタリと急に重しを失った椅子が音を立てる。白衣を着た女性が血相を変えて、私の顔を覗き込む。あんなに穏やかだった目も焦りや不安の色を写してしまっていた。


「おねーさん、お顔怖いよ？ どーしたの？」

「っ、ごめんね。ねぇオリヴィアちゃん、今全然苦しくない？」

「苦しくないよ、大丈夫。……私、何かおかしなとこあった？」

「ううん、そんなことないのよ！」


不安になったので声をかけて見ると女性は、はっとした様子で無理やり笑顔を作った。動揺しきった女性の様子に、もしや自分に悪い病気が見つかったのか、もしくは自分は小魔力者(ベタード)だと判断されてしまったのかと思い、彼女のことを見上げる。

彼女は私の体に取り付けた器具を順に取り外し、最後に頭につけた機械を脱がせた後、私のことをベッドに腰掛けさせた。

彼女はパソコンを操作し、一枚の紙を印刷してから私に手渡した。


「いい？落ち着いて聞いてね。オリヴィアちゃんは明日、この紙をもって検査機関に来て欲しいの。」

「いや、落ち着くのはおねーさんのほうね。
で、なに？私は結局どの階級なの？」


こほんとわざとらしく咳払いをして、私を諭すように言う女性の態度がおかしくって、ツッコミを入れる。私は自分がどの階級になるか不安でしょうがないので、彼女を急かす。


「えっと、オリヴィアちゃん、おめでとう！ あなたは魔法使い(ソルシエール)です！」

「っ、……よかったぁ！」


女性の口から紡がれた言葉に、やっと緊張の糸が切れた。

ここで階級を詳しく説明すると５つに分けられる。魔力の少ない順から、小魔力者、預言者(プロフェート)、祈祷師(シャーマン)、呪術師(アンシャンテ)、そして魔法使いとなっている。

魔法使いの階級を得るために必要な条件は魔力が700より多いこと。魔力保持者の平均魔力保有量は飛び抜けて魔力の多い魔法使いを抜いて計算すると、130である。そしてさらに言うなら、先ほど使った占いは3、予知は20〜50の魔力を使う。

ちなみに私の両親はどちらも保有魔力5000以上の魔法使いで、彼らはそのことに誇りを持っている。そして私が魔法使いになることを切望していた。あれほどの緊張の原因はここにあった。

先程もらった紙とは別の、しっかりした紙質の証明書を女性から受け取ってから、最初に待機していた教室に戻るとパッと顔を上げたアイリスがこちらに手を振ってくる。隣にルーファスの姿はなかった。

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