検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:10,140 hit

第31話:黒髪の少女 ページ33

魔力が底をつきそうになったら一旦回復を待って、また限界まで魔法を使う。そんな作業は決して楽なものでは無く、5時間目の授業が終わる頃にはみんな肩で息をするくらい疲れ切っていた。

私は15000の魔力をこんな短時間で、しかも消費魔力が200程度の初級魔法だけで使い切ることなんてできず、他の生徒ほどは消耗しなかった。

今日の分の授業は全て終了し、一旦教室に戻ることをせずにこのまま解散になった。教室に荷物を取りに行きたい人は戻り、特に用事がない人は初等部寮へと向かっていく。


「アイリス……大丈夫? 歩ける?」


そんな中、アイリスだけが地面に座り込んでしまっていた。頑張り屋の彼女のことだから、限界を超えて魔力を使ったのだろう。私は血の気が引いてしまっている彼女に肩を貸して、木陰にあるベンチへ連れて行き、座らせた。

このまま魔力が回復して歩けるようになるのを待つか、治癒魔法が使える先生を呼んできた方がいいのか悩む。先生を呼んでくるとしても、その間アイリスを一人きりにしておくのも心配だ。


「あの……よかったらこれ使って?」


そんな時、誰かが声をかけてきた。そちらに目をやると膝くらいまで伸びた、黒くて長い艶やかな髪に菖蒲色の目を持つ少女がいた。私やアイリスよりも少しばかり背が高い少女は、緑色の液体が入った小瓶を差し出してきた。

突然差し出されたそれが何なのか分からなくて警戒していると、少女が慌てたように付け足す。


「あ、これ魔法薬なの! 魔力を回復させてくれる効果があるわ。……ちょっと苦いけど。」



そういえば、そんな物があるという話を聞いたことがある。ただその薬は結構高価なものだったような気がする。目の前の少女は見たことがあるから、同じクラスの生徒なのだろうけど、何故そんなに仲良くもないアイリスのために薬をくれるのか分からない。でも少女から敵意は感じられないし、アイリスも苦しそうだしで、私はお礼を言って少女から薬を受け取り、アイリスに飲んでもらった。

薬を飲んでしばらくすると、真っ青だったアイリスの顔に血色が戻ってきて、呼吸も落ち着き、苦しそうに歪めていた表情も和らいだ。
側で見守ってくれていた少女も、アイリスのその様子に安堵したように息をつく。


「あの、薬、本当に助かった。ありがとう。 その……。」

「私、ミレーネよ! 私の両親が作った魔法薬なの。役に立ってよかったわ!」


黒髪の少女、ミレーネははにかむように笑った。

第32話:新しい友達→←第30話:魔力増量訓練



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 魔法 , 学園 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えるふぃ(プロフ) - ゆいな♪さん» ゆいな♪さん、ストーリーをお褒め頂きありがとうございます(*´ω`*) 描写頑張った甲斐があります!これからもっともっと引き込んで行けるように頑張りますね!応援ありがとうございます! (2019年8月24日 23時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな♪(プロフ) - あわわ、す、すごいです!ストーリも分かりやすいので、凄い引き込まれます!更新頑張ってください! (2019年8月16日 13時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - ぽむぽむぽあろさん» ぽむぽむぽあろさん、ありがとうございます!そんな風に褒めてくださって嬉しいです!読み手に情景が伝わるように書くのが目標だったので(*´ω`*) 夏休みに入ったら更新速度上げられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年7月30日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむぽむぽあろ(プロフ) - 設定がしっかりしてるので、お話の内容がアニメーションになって頭の中に浮かびます。とても面白くて好きです。もっと伸びてておかしくないと思うので更新頑張ってください! (2019年7月30日 12時) (レス) id: b97deb3170 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - ちょこころねさん» ちょこころねさん、はじめまして!世界観とキャラの設定は一番力を入れたところなので、そこを褒められるとめっちゃ嬉しいです!文章長いのに一気読み、おつかれさまです!ちょこちょこ更新するのでよろしくお願いします! (2019年1月18日 10時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えるふぃ | 作成日時:2018年9月23日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。