HUNTER×HUNTER〜孤独なアサシン〜part２

No.80：別れ ページ43

執事が車の中から出てきてドアを開けてくれる。そこに乗り込もうとした瞬間、背後から声がかかった。


「A、待って！」


振り返った先にいたのはゴンだった。彼は息を切らしており苦しそうだ。その様子からよっぽど慌ててきたことが読み取れる。


「よかったぁ、間に合って！ Aと話したくて探してたんだよ！」


ゴンと顔を合わせるが気まずかったが、せっかくこうしてやってきてくれた彼を無視するような非情な人間にはなりたくなかった。待ってくれている執事に少し彼と話をさせてと断りを入れてゴンと向き直った。


「黙って消えてごめん。顔合わせづらくて、さ。」

「もしかして、ギタラクルとの事？」


あの時ゴンは気を失って医務室にいたから、僕とギタラクルの会話を聞いていなかったはず。それなのにこの言葉が出てくるということは、すでに誰かから話を聞いていたのだろう。そうだとしたらますます心苦しい。
だって僕は、イルミの脅しに負けてキルアのことを見捨ててしまったのだから。先ほどのイルミとゴンのやりとりを見る限り、ゴンがキルアのことを大切に思っていることは確か。しかも僕は結局彼に自分が暗殺者だということを話していない。自分隠し事をしていた上、キルアを見捨てた僕のことをゴンは良くは思ってないだろう。


「……Aはさ、家のこと嫌じゃないの？」


しかしゴンの口から出たのは、僕を蔑む言葉なんかじゃなかった。

ゴンはそのまま続けた。僕がキルアのように無理矢理殺しをやらされているんじゃないか、もしそうなら絶対に自分が助け出すから言って、と。

こんな最低な僕のことも、キルアと同じくらい大事にしてくれていることが嬉しかった。
暗殺者は普通、必要以上に自分の情報を外部に漏らさない。この世界では情報が命だからだ。一般人に顔を見られたからと言ってその相手を殺してしまう暗殺者だっている。


「僕はこの仕事嫌いじゃないよ。」


だけど真っ直ぐな心で僕に向き合ってくれるゴンには全部話しておきたいと思った。

ゴンは少しの間黙って、僕の目を見つめていたけど、ふっと硬い顔を崩して笑った。


「それならよかった！」


そうしているうちに僕を探していた他のみんなも集まってきた。これ以上話を長引かせて執事を待たせるわけにはいかない。


「そろそろ行かなきゃ。短い間だったけどほんと楽しかった。」

「俺は今でもAのこと、友達だって思ってるからね！！」


ゴンの言葉を背に車に乗り込んだ。

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