No.74:違和感 ページ37
目の前のギタラクルは怒っているのだろうか。表情からは全く感情が読み取れないからわからない。ただ肩を抑える手の力が弱まることはなかった。あまりの力に骨が砕けてしまいそうだ。
本当にギタラクルが怖くて彼の言葉に従ってしまおうと一瞬だけ考えたが、悲しそうなキルアの顔を思い出し思いとどまった。ここで僕が引いてしまえばキルアの心の支えがいなくなってしまう。
家業が暗殺者で孤独な日々を過ごしてきたと言う同じ境遇を持つ彼を見捨てるわけにはいかなかった。
「やだね、絶対取り消したりなんかしない!」
殺されるかもしれない恐怖よりも、キルアを裏切ることの方が怖かった。それにギタラクルはハンターの資格を欲しがっている。そのためハンター試験が続く限り僕が殺されることはないことを知っていた。だから強気に出れたのかもしれない。
ギタラクルは僕の言葉を聞くなり両手の力を強めた。同時に溢れさせていた殺気の濃度も増す。その場にいるだけで息もできないほど濃い殺気が漂っている。
「うーん、まいったなぁ。アイツ、教育が足りてないっぽいね。」
だけどギタラクルはいくら殺気を出そうと、力を強めようと、僕が絶対に言葉を取り消すことがないと悟ると、ぱっと力を緩めて殺気を引っ込めた。そして右手で頭の後ろをぽりぽりと掻きながらため息を一つこぼす。
その時、またも違和感を覚えた。会話の流れに全く関係ない『アイツ』と『教育』の言葉がやけにひっかかる。
第一、黒服の男には針まで刺して自分に従わせたのに、僕に対しては大きな危害を加えてこないのがおかしい。殺さずに自分に従わせるなんて、彼なら簡単にやってのけるだろうに。
疑心の目を向ける僕の顔を数秒見つめた後、ギタラクルは何か閃いたかのように手を叩いた。
「そうか……やっぱり、おかしいとは思ってた。Aはオレのこと覚えてないんだね。」
時が止まったように感じた。一瞬で思考が止まりなにも考えられなくなった。
ギタラクルは僕のことを知っている。
思えば三次試験で一緒に行動した時から何かおかしかった。初めてあったはずのギタラクルはなぜか僕をただの子供扱いしないどころか、僕がギリギリこなせるレベルの行動を要求してきていた。僕が今年の受験者の中で最も幼いのにもかかわらず。それは彼が僕の実力を知っていたからできたこと。
なんで忘れてるか知らないけれど、と前置きしてからギタラクルは話し始めた。
129人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます! (2018年8月30日 15時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです!続き頑張ってください! (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω`*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか!それは嬉しい褒め言葉です(*´ω`*)自分でも話を考えてるときはワクワクします! (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです!更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω`*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えるふぃ | 作成日時:2016年3月27日 19時