No.69：動けない恐怖 ページ31
足元がふらつきたたらを踏む。滴り落ちた血液は、ぼたりぼたりと床を汚していく。ヒソカは目に入った血に視界を奪われたらしく顔を拭っている。
だけれど血液は粘性があるため、もとの視界を取り戻すにはまだまだ時間がかかる。ヒソカの視覚が機能しないうちに、僕は体を覆っていたオーラを消し完全に気配を消した。
気配を消せばこっちのもの。僕はオルクス家で一番、気配を消すのが得意だった。親とかくれんぼしたときだって負けたことはない。普通の人間相手なら、見られている状況からでもいなくなったことに気づかせずに隠れることだってできた。
今やったのは三次試験の最終試練でやったことと同じだ。ただ今回はフロア全体が明るく、障害物も何も無かった。こんなだだっ広い空間ではヒソカから隠れることは出来ない。だからまず、明かりを消すのではなく、彼自身の視界を奪ってしまおうと考えたワケだ。
作戦は成功した。ただ、想定以上に出血量が多かった。一度きりのチャンスにかけるため、今回は左手の動脈を切り裂いている。体の動きが鈍るのも時間の問題だった。
体が動くうちに仕留めなくては。
「いやぁ、まさかAがここまでやるとは思わなかったよ♥」
一旦距離を取り、ナイフを構え直した時、不意に体が意図せぬ方向に引っぱられた。正体不明の力に抗おうと踏ん張って見たけど、力は思った以上に強力で争うことはできなかった。そのまま僕の体はヒソカがいる方向に引き寄せられる。
ぐるりと視界が反転して、体を地面に押さえつけられる。そこには確かに何もないのに、僕は地面から離れられない。そして何故か瞼さえも開けなくなっていた。すると影が差した感じがして、ずしりと重みがかかる。
「初めからこの展開を狙っていたのかい？
すると1回目の攻撃はフェイク？」
「っ、……勿論あの時も本気だったよ。念までこめてさ。でも全然通用しないから。」
見えないのにヒソカの歪んだ笑顔が浮かんでくるようで。周りの状況が確認できないことが、自分の意思で体を動かせないことが、こんなにも辛いなんて。
「……得意な暗殺に持ち込めば、あのまま戦うよりは全力、だせるから。」
「まんまとボクはしてやられたわけか。」
上から降ってくる質問に、ただ返すことしかできない。そうしているうちにもどんどん血が流れ出て、異常なほどの寒気に襲われた。
このまま目の前の恐怖から逃れることができるなら、意識を失ってしまってもいいと思った。
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えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます！ (2018年8月30日 15時) (
レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです！続き頑張ってください！ (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか！それは嬉しい褒め言葉です(*´ω｀*)自分でも話を考えてるときはワクワクします！ (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです！更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2016年3月27日 19時
