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仕事が終わり、雲林院家へ向かう。
意識しなくとも、歩くスピードが落ちてしまう。

ああ、もし拒絶されたらどうしよう。

そんなマイナス思考が頭を埋めていく。

こんな我儘な私を。
意気地なしで駄目な私を。

憲吾はどう思うのだろうか。


戻れば、楽。 だと思う。
けど戻れば、絶対に後悔すると分かっているから。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「憲剛様。お客様です。お時間大丈夫でしょうか?」

傘下の人に声を掛けられる。

「客?誰だ?」
「や、やぁ。憲剛。最近調子どうよ?」

Aだった。
笑顔が引き攣っていて、どこか深刻ささえ感じる。

「最近って、お前なぁ…昨日会ったばかりだろうが!ったく…」
「まぁ、そうなんだけどさ…」

目を泳がせていて、何かを隠しているようにも、俺の機嫌を伺っているようにも見える。
どっちにしろ分かりやすい奴だ。

これで、勘久郎が気付かない理由が全く見つからない位に、だ。

「で?何の用だ?ただ世間話しに来た訳じゃないだろ?」
「まぁね。ちょっと色々あってさ…気晴らしに憲剛でもいじろうかなと」
「それだったら金取るぜ¥」
「あ、それは止めて。切実に」

軽く笑うが、少し目を見つめると、観念したように溜息を吐いた。
そして、真面目な顔付に変わる。

「あのね、凄く我儘だって分かってる。だけど聞いて欲しい」

…予想はついていた。願っていたことでもあるのだ。

「私ずっとうじうじしてた。…憲剛にも迷惑掛けたよね。…ほんとにごめんなさい。憲剛には沢山背負って貰ってたと思う。私、逃げてばっかりで…しなきゃ、いけないこと、なん、にも、かんが、てなく、て…ごめん、ごめんね」

しゃくり上げながら話すA。
ったく、面倒な事させやがって。

「俺はあの時からずっと勘久郎を見てた。…ただ、何もできてねぇ。勘久郎を変えれてねぇんだ」

Aが唇をかんで下を向いている。

「そんな直ぐに立ち直れるもんじゃねぇ。でも」




「お前もしっかり支えてやってくれ。頼む」

Aが顔を上げて微笑んだ。

「当たり前だよ…。あれだけ、支えてもらってるんだから…ね」

それもそうだ。と笑えてしまう。

「良かったよ。で、取り敢えず泣き止め。こっちが悪いことしてる気分になる」
「あぁ、ごめんね?けどちょっと待って…」

きっと、勘久郎ならこいつを一瞬で泣き止ますんだろう。

そんな風に戻りたいと願っている自分がいた。

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設定タグ:双星の陰陽師 , 水度坂勘久郎   
作品ジャンル:アニメ
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水麟 - 紅 こべにさん» ありがとうございますっ!凄く嬉しいです!(満面の笑み) (2019年5月3日 16時) (レス) id: 65c8c71a9b (このIDを非表示/違反報告)
紅 こべに - 面白すぎませんかこういうシリアス大好きです(真顔) (2019年4月27日 6時) (レス) id: 64e65a2b60 (このIDを非表示/違反報告)
水麟 - おりんさん» ありがとうございます!嬉しいの一言です! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 0dc0777a12 (このIDを非表示/違反報告)
おりん - 水麟さんの作品は全部好きやなぁ…(キラキラ) (2019年3月30日 11時) (レス) id: be6cccc8ca (このIDを非表示/違反報告)
おりん - え、何これメチャおもろ (2019年3月30日 11時) (レス) id: be6cccc8ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水麟 | 作成日時:2018年11月14日 16時

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