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「勘久郎?いる?」
ひかえめなノックと共にそんな声が聞こえた。あぁ、彼女はもう帰って来たのか。まだ休憩時間には余裕がある。心配をかけてしまっただろうか。
「いるっス〜、入って良いスよ〜」
さっきの彼女の声には不安そうなニュアンスが混じっていた。早く大丈夫だと伝えないと。
「勘久郎、大丈夫?」
困り顔で近づいてくるAに噓はないと確信する。
「大丈夫ス〜、心配かけて悪かったスねぇ」
「良かった…」
そう言うと安堵の表情を浮かべる。あぁ、本当に愛おしい。その声も表情も全てが愛おしい。
「あ、でも勘久郎?多分だけど無理してた、よね…?」
下唇を噛み締め俯くA。違う。違うんだ。Aの所為じゃない。
こういう時“僕”ならどうする。自然体の僕なら。
「何も無理してなんか無いっスよ?大丈夫ス」
そう言って彼女を撫でる。
しかし、彼女はいつものようには笑わなかった。それどころか今以上に歯を食いしばり、瞳には涙が浮かんでいた。
どうしよう、と戸惑っているとバッとAが視界から消えた。それとほぼ同時に体に温もりを感じた。
彼女が―――抱き着いて来たのだ。
「馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!大丈夫なんて嘘!いっつもそう!大丈夫なんて言って全然大丈夫じゃないだから!私には説教する癖に自分は無理ばっかして!ちゃんと休め馬鹿ぁ!」
あー、この子、僕のことを美化し過ぎだ。僕はそんなに出来た人間じゃあ無い。なのに。
なのにこの子はそんな奴のために涙を流しているのだ。
なんで、なんて言葉よりも前に涙が零れ落ちた。
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結構最初に言うべきだったけど、天馬様の『赤娘』って言い方死ぬほどダサくないですか。
誰かいいのあったら教えて下さい!!
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水麟 - 紅 こべにさん» ありがとうございますっ!凄く嬉しいです!(満面の笑み) (2019年5月3日 16時) (レス) id: 65c8c71a9b (このIDを非表示/違反報告)
紅 こべに - 面白すぎませんかこういうシリアス大好きです(真顔) (2019年4月27日 6時) (レス) id: 64e65a2b60 (このIDを非表示/違反報告)
水麟 - おりんさん» ありがとうございます!嬉しいの一言です! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 0dc0777a12 (このIDを非表示/違反報告)
おりん - 水麟さんの作品は全部好きやなぁ…(キラキラ) (2019年3月30日 11時) (レス) id: be6cccc8ca (このIDを非表示/違反報告)
おりん - え、何これメチャおもろ (2019年3月30日 11時) (レス) id: be6cccc8ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水麟 | 作成日時:2018年11月14日 16時