3.兄 ページ7
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「多分あんさんは俺の存在を知らなかったやろ？」
『そうですね…』
突如現れた兄と名乗る彼をどうしても怪しく思ってしまう。
「信用してなさそうやな」
『あっ、すみません』
「いや、怪しまれても仕方ない。」
彼は少し笑いながら、これ、と1枚の紙を見せてくる。
『養子…縁組…？』
「実は、桃瀬屯とは血が繋がってないんや。あんさんとも。ほら、桃瀬屯には息子がおらんかったやろ？それで、分家の富田林家から養子に来たってことや。」
『なるほど…血の繋がってない兄という訳ですね』
「せやねん。折角ここに自分の妹がいるなら話しときたいと思ってな。突然話しかけてすまんかった。」
『いえいえ、こちらこそ失礼な態度とってしまってすみません。』
実を言えば、昔から私は兄という存在に憧れていた。
だから、正直今の状況にテンションは爆上がりなのだ。
「まぁ、あと少しの間やけど、よろしくな。」
『よろしくお願いします！』
「あと、タメ口でええよ。これでも兄弟やし。」
『わかった…』
「じゃあ、またな」
『じゃあね』
なんだか不思議な気持ちだ。
ここに来てから、友人の輪が広がったり、欲しかった存在が手に入ったり…夢のようだ。
でも、それもあと少しでお終い。
なんだか寂しい。
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桃瀬豚平は、執務室に着くなりため息をつく。
机の上の山積みの書類を処理しなければならないからだ。
椅子に座り、次は何をしようか考え込んでいると、全身黒に身を包んだ男が入ってくる。
「それで、お嬢とは話せたのか？」
「さっき会ってきたで。」
「それは良かった。」
桃瀬豚平は気にすることも無く机に向かって作業を始める。
「お嬢との関係は我々にとってとても重要だ。」
「養子という称号だけじゃ物足りんか？グルッぺン？」
「これも、次期組長の座を確実なものにするため。絶対にコネシマ派には負けられんからな。」
「コネシマは暴力的なあまり組員に好かれていない。その面で俺は勝っている。絶対に組長になったるからな。」
「へえ。期待してますぜ。」
彼らは組長争いがこんなにもすぐに訪れることを、知る由もなかった。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2022年11月7日 21時
