2.もうすぐで ページ5
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あれから1ヶ月たち、私はだいぶ今の環境に慣れてきていた。
我々組の組員は皆私に何不自由なくさせてくれて、大学も普通に通えた。
さらに言うなら、ヤクザらしいことは何も私の前では執り行われず、自分が裏社会にいる実感もなかった。
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『ただいまー』
「あーおかえりAちゃん」
大先生が駆け寄って来て、その勢いのまま抱きしめてくる。
あ、ちなみにタメ口で話せるくらいには馴染めた。
『え何どうしたの』
「んー、充電」
『そっかー離れてくださーい』
「え」
『ん？』
「辛辣」
『離さないとコネシマさんに言っちゃうよ？』
すると大先生は直ぐに手を離し、「それだけはー！！」と言ってくる。
どんだけ裏のコネシマさん怖いんだろう。
私の身は今、コネシマ派と呼ばれる派閥に置かれている。
コネシマさんは若頭という偉い立場だったのだ。
その下につく大先生は、私のお世話係みたいなものだ。
もう1人、シャオロンさんって人もいるのだがあまり見かけない。
『そう言えば、組長が釈放されるのももうすぐだね。』
「せやねー」
『そうしたらここからお別れなのは少し寂しいな』
「…まあね」
含んだ言い方をする大先生を少し気がかりに思う。
「でもな、ここは一応裏社会やからあんまりいない方がええで。」
確かにそうだ。ここにいる限り命は保証されるが、いつ危険な目にあってもおかしくない。
「そんな顔せんといて。叔父貴が釈放されたら会えなくなるわけじゃないから。」
『ほんと？』
「ほんと」
『じゃあいっか』
「せやから、レポート終わらしてきーや」
『あ…』
大学のレポートまだだった。
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ut side
Aちゃんが去ったあと、シャオロンが暗闇から現れる。
「あ、シャオちゃん」
「大先生、お嬢の方はどうや」
「元気にしとんで。叔父貴が釈放されて俺らに会えなくなるのを寂しがってるくらいや」
「いじらしいなあほんま」
「俺らが父親殺そうとしてんのに」
シャオロンは怪しく笑い、もう手配できたで、と言う。
「名前は？」
「菅原ゾム太っちゅう奴や。先に100渡して信用してもらったわ。」
「腕は確かなんやろうな」
「組潰したらしいで」
これなら行けそうだ、と確信した俺の口角も怪しいくらいに上がっていた。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2022年11月7日 21時
