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『モエ・エ・シャンドンの黒をお願いします。』
ツバキさんの言葉を信じてシャンパンを頼む。
そもそも仕事で来ているのに何故彼にシャンパンを頼まなければならないのだろうか。資金源のコネシマさんに心の中で謝罪の言葉を繰り返しながらコールを待つ。
「モエブラ入りましたー!!」
「よいしょー!!!」の威勢のいい声と共にうるさかった音楽は更にうるさくなる。
ショッピ君もそれに気づき、先程の女の人から離れる。
女の人はとても悔しそうな顔をしていたが気にしないことにした。
間もなくしてシャンパンコールとやらが始まる。
正直地獄絵図すぎて今すぐにでも帰りたかった。
乗り気じゃなかった私の顔はきっとものすごく死んでいただろう。
「そんな姫よりー3、2、1」
ボーッとしてると突然マイクを渡される。
渡されたところで話すことなんてないし、何を言えばいいのだろうか。戸惑っているとショッピ君が「お酒は好きですか?」と小声で言ってくる。
『え、好きだよ?』
と反射的に返すと、周りのホストは雄叫びをあげる。
中には「大胆っすね!!」などと言ってくる人もいたのでますます訳が分からなかった。
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シャンパンコールが終わり周りのホストは消え、ショッピ君と2人きりになる。彼は先程私が頼んだシャンパンを静かに飲んでいた。
『あのさ...』
「...なんですか?」
『私は仕事でここに来ているの。ショッピ君も仕事でここに潜んでいる。だからこんなにしっかりとお金の関係を持つ必要はない気がする。』
それを聞いた彼はフッと鼻で笑う。
「どうして俺がこの仕事を引き受けたかAさんはわかりますか?」
『コネシマさんに頼まれからじゃないの?』
「違いますよ。お金が欲しいからです。貰えないんだったらあんな女と話すわけないじゃないですか。」
ハッキリと私の目を見て話す。
あまりにも馬鹿正直に本音を話すので何も言い返せない。
「Aさんからシャンパン貰ったのは悪いと思ってますよ。でも、俺はそれくらい本気で金が欲しいんです。あ、これ、コネシマさんに渡しといてください。」
前回と同じように封筒を渡される。
「あ、あと、もし嫌ならもう来なくていいっすよ。他の人に頼むんで。」
彼は私を突き放すように言い放って席を後にした。
彼の金への執着に呆然とする私は、その後ろ姿を眺めることしか出来なかった。
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作者名:らあ。 | 作成日時:2022年11月7日 21時