十夜 ページ10
「………ぅわ……」
いきなり現れた気迫のようなものに、気圧される。私は数歩後ずさった。
「ん、どうした………
ああ、これはオヤジの覇気だ。どうやら、お前
に気づいたらしい」
あんまり気にしてないっぽいけど。と、サッチ
は言った。
今、私たちは、船長室へ行くための廊下を歩いている。この船の船長、"オヤジ"に会いに行くら
しい。
なんだか、肌がビリビリして痛い。もし人間だったら、数刻は余裕で気絶しているだろう。
「お前、覇気が分かるんだなあ。こりゃ将来有望
だぜ」
サッチが楽しそうに笑う。こいつ、こんなの受けて平気でいられるとか……こういうのを経験の差っていうのかな………
「…………大丈夫なの？ペチャンコに潰されたりしな
い？」
「しないしない！オヤジはそんな非道じゃねえ」
慌てて弁解しようとしている。嘘ではないらしい。というか………
「海賊に非道じゃないとかあるの？」
ふと、疑問に思った。海賊は海賊。略奪はするし、殺しもするはず。海賊のする行動はほとんどが非道なこと………だと、思う。
「そうだなあ…う〜ん、そっかあ。俺たちとお前
じゃあ、価値観が違うもんな………
まあざっくり言うと、"仁義を通すか、通さない
か"ってとこかだな」
「仁義……」
「そう、仁義。飯食ったら食った分は働く。恩を
受けたら必ず返す。そんなもんだ。
少なくとも、オヤジは仁義を通す男だぜ」
"オヤジ"のことについて話すとき、サッチはいつも誇らしそうにしている。説明されても意味がよく分からなかったけど、その"オヤジ"が大好きなんだろうなというのはかなり伝わってきた。
「……そっか」
私はただ、相づちをうっただけだったけど、サッチは満足してくれたようだった。
「_____さ、ついたぜ。
我が白髭海賊団の船長。エドワード･ニューゲー
トの部屋だ」
部屋の外からでも分かる、威圧。本能的に、それが強者しにか出せないものだと分かる。余計に体がこわばった。
コンコンッ
「オヤジ、サッチです。入ります」
ノックをし、普通のものよりはるかに大きい扉を、サッチは開けた。外の空気が中に吸い込まれていくのを感じる。
「おお……ようやく来たかァ。小娘……」
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更新遅れてすみませんでしたあああ！！！
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作者名：シヲリ | 作成日時：2019年6月19日 22時
